248.意欲篇:他にやり方があるのでは

 あなたはひとつのやり方に固執していませんか。

 他のやり方も試してみて、自分に合う合わないを見極めましょう。





他にやり方があるのでは


 あなたは小説を書いているとき、いつも同じやり方をしていませんか。

「小説を書く」やり方はひとつではありません。人それぞれです。

 私がここまで書いてきたコラムの中でもAのやり方、Bのやり方、Cのやり方とさまざまな提案をしています。

 そのどれかがあなたにしっくりとくるかもしれません。

 残念ながらどれもしっくりとこなかった方もいらっしゃるでしょう。




小説は数式ではない

 小説は「必ず同じ道をたどる数式の解法」ではありません。

 どのような世界観・舞台で、どのような人物たちが、どのような行動をとるのか。

 ひとつとして同じ小説、同じ物語はないのです。


 それと同様「小説の書き方」も人それぞれ最適なやり方が異なります。

 私は本コラムを書くためにさまざまな小説家や文筆家の書く「小説の書き方」「文章読本」の類いを読み込みました。

 まとめてみると大筋はだいたい同じです。でも細部や過程の異なる「大同小異」な箇所も多く見られました。

 そのうち私なりに最も重要度の高いものを選択して述べています。

 もし小説が「数式の解法」ならば、誰が書いても同じことを同じように書いていたはずです。

 それでも人によって異なる部分があります。

 やはり「小説の書き方」は「小説」と同様「必ず同じ道をたどる数式の解法」ではないのです。

 現在「コンピュータに小説を書かせる」研究が進められています。

 たとえば登場人物のキャラをそれぞれの変数に入れ、それらを組み合わせて天候や気象などの状況を作り、そこに出来事を起こして微分積分したとして、果たして同じ小説の書き方になるのでしょうか。

 キャラはなにがしかの要素が異なりますし、キャラの組み合わせも異なります。出来事を起こして波及する範囲も異なるのです。

 これだけ見ても同じ小説が出来あがらないことはわかります。




無理やり型にハメない

「一文をできるだけ短くするべきだ」と「リズムを刻むために長くするべきだ」

「文末の基本は『〜た』であるべきだ」と「文末は必ず変えるべきだ」

「先にプロットを仕上げてから書き始めるべきだ」と「キャラが決まったらそのキャラがイメージできているうちに書き始めるべきだ」


 代表的な三つの差異を挙げてみました。

 どちらが正解かではありません。どちらもそれなりに納得の行く主張です。

 その中で自分にはどれがしっくりくるのか。それを選ぶために「小説の書き方」や「文章読本」を読むべきなのです。

 ですが一冊の「小説の書き方」に書かれている内容すべてを真に受けて、自分を無理やりその型にハメてしまうような人が跡を絶ちません。

 それでは「その書き手の劣化コピー」が出来あがるだけです。あなたのオリジナリティーなんて露ほども残りません。




やり方はひとつではない

 そこで皆様に改めてお伝えしたいのが「小説を書くやり方はひとつではない」ということです。


 ひとりひとり自分にしっくりくる文体というものがあります。

 話し言葉がみんな個性的であるように、書き言葉もみんな個性的であっていいのです。

 私は無理やり型にハメて没個性化するよりも、「最低限文法や原稿用紙の使い方は守り」つつ、それでいて「自分が書きやすい文体で書く」ことをオススメします。

 そうすれば「誰かの劣化コピー」なんていう不名誉なレッテルは貼られません。


 あなたのオリジナルな世界観で、あなたのオリジナルな文体によって書かれた小説はあなたのオリジナリティーに満ちあふれています。

 小説の魅力はそういったところに表れるのです。

 小説投稿サイトで今流行りの小説のテンプレートに則っただけの小説を書くよりも、数段上の魅力があります。

 ただ流行りのテンプレートでないために評価やブックマークといった反響が少なくなる傾向が結果として出るのです。

 それだとせっかく小説を書いたのにやる気が起きませんよね。


 ここでも「やり方はひとつではない」のです。

 流行りのテンプレートに則りつつそれでいてあなたのオリジナルな文体で書かれた小説なら、オリジナリティーは減るのは確かです。

 でも読み手から受ける評価やブックマークといった反響は必ず増えます。

 そうやって読み手を掴んでから、どんどんテンプレートから離れてオリジナルな展開に持ち込むのです。

 そうすれば読み手は「今面白い小説を読んでいる」と感じることでしょう。評価はさらに高まります。

 ランキングを駆け上がるのはえてしてこの手順を踏んだ小説です。

 だから流行りのテンプレートを見つけ出す努力を惜しまないでください。




流行りのテンプレートを見つけ出す

 小説投稿サイト最大手の『小説家になろう』では各ジャンルの上位を占めるのはほとんど同じ「テンプレート」を用いた小説です。

 つまりランキング上位の作品を読み込めば「流行りのテンプレート」が簡単に見つけ出せます。

 たとえば主人公がどんな人物像なのか、「対になる存在」がどんな人物像なのか、周りにいる人物はどんな属性で、どんな社会や舞台で、どんな対立構造なのか。

 そういったものがいわゆる「テンプレート」です。


「テンプレート」が見つかったら、それを自分の作品に合うようしつらえます。

 つまり「テンプレート」と「書き手のスタイル」とを掛け合わせるのです。

 せっかく「テンプレート」を手に入れたのに掛け合わせないで流行りの文体で書いた小説を投稿しているだけでは人気なんて出ません。

「テンプレート」は読み手に一定の期待感をもたらします。だから安心して連載を追ってもらえるのです。

 安心して連載を読んでいますが、こちらとしては意図的にそこから少しずつ少しずつ逸していきます。

 すると「おっ、この小説は他のと違うぞ」と読み手が前のめりになって読んでくれるようになります。閲覧数(PV)を稼げるのです。

 後はあなたの作品による勝負になります。

『小説家になろう』で「文章評価」と「ストーリー評価」がどれだけ稼げるかは、まさにあなたの筆力ひとつにかかっているのです。


 だからひとつのやり方に固執せず「他にやり方があるのでは」と絶えず模索してみましょう。そこから新たなヒット作を生み出す可能性が高くなります。





最後に

 今回は「他にやり方があるのでは」ということを述べました。

 小説の書き方はひとつではありません。正解はあくまでも結果でしか判定できないのです。

 ヒット作となった書き方こそがあなたにとっての「正しい小説の書き方」となります。

 だからたくさん「小説の書き方」「文章読本」の類いを読み込みましょう。そして気になったところを意識して模索するのです。

 たったひとつの「小説の書き方」を知るだけでは、あなたにとっての「正しい小説の書き方」には巡り会えません。

 そのため私は本コラムで同じ事柄について、あえてさまざまな角度から提案しています。

 それをブレととらえるか多様性ととらえるかは、読み手でありこれからの書き手であるあなた方に判断していただきたいのです。



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