201.再考篇:キャッチコピーとあらすじ

 今回は「キャッチコピーとあらすじ」です。

 いいタイトルが出来ても「キャッチコピー」や「あらすじ」「キャプション」で小説の内容を端的に示さなければ小説投稿サイトではクリックされません。

 紙の書籍になっても裏表紙に「あらすじ」を書くこともあるので、今からでもよい作り方を考えてみましょう。





キャッチコピーとあらすじ


 小説を書いているときはあまり考えないことなのですが、いざ小説投稿サイトへ投稿しようとなったときに必要になるものがあります。

「キャッチコピー」です。

 この小説はこんな作品ですよ、とアピールするには「あらすじ」「キャプション」だけで事足りると思っている方も多いと思います。

 論文などの実用文は「始めに結論を書き、それから具体的な本論を書く。最後はまた結論を書いて念押しする」スタイルで書かれているのです。

 小説の「あらすじ」「キャプション」も基本は同じ。


 まず「キャッチコピー」でこの小説はこんな小説ですよとアピールした後に、具体的な「あらすじ」「キャプション」を書くのです。

 そうすればあなたの小説がクリックされる確率が高まります。




キャッチコピーで書くべきこと

『カクヨム』では作品に「キャッチコピー」を付けることができます。

 どんな「キャッチコピー」を付けるかで閲覧数が変わってくるのです。

「キャッチコピー」には具体的な数字を出しておきましょう。

■具体的な数字を出す

 フランク・ミラー氏の小説でハリウッド映画にもなった『300《スリーハンドレッド》』は「300人のスパルタ兵が100万人のペルシア軍に立ち向かう」話です。こう書いてあるだけでワクワクしてきませんか。

 黒澤明監督『七人の侍』は「7人の侍が野武士の一団と戦う」話です。野武士の数が不明瞭なので『300』よりも少しワクワク感が薄いかもしれません。しかし後にハリウッドでリメイクされ『荒野の七人』となったのは有名な話です。

 少なくとも味方が7人しかいないという「キャッチコピー」だけでもじゅうぶんに読み手の気を惹ける好例でしょう。

 ハリウッド映画が日本で上映される際、ほとんどの作品が「全米ナンバーワン」であることはもはや知らぬ人のいない話です。

 とりあえず何か1位として語れるものがなければ日本で上映できないような印象を与えます。


■読み応えや読後感を書く

 読み応えや読後感を断定的に示す方法もあります。

 こちらもハリウッド映画の日本上映キャッチコピーで「全米が泣いた」「涙なしでは観られない感動の実話」「抱腹絶倒の90分」などよく使われる手法です。

 とくに「全米が泣いた」という文句はもはやインターネットでさまざまなパロディを生んでいます。

 ジャッキー・チェン氏の主演映画なら「息をつかせぬ緊迫バトル」であったり「スタントなしのハラハラ・ドキドキ体当たりアクション」であったり。こちらも見事な格闘シーン・アクションシーンが見どころですよと伝えています。

 ハートフルなコメディー作品ならそのまま「ハートフル・コメディの金字塔」と書いてあり、壮大な物語なら「世界を揺るがす大事件に挑む」「人類の生存を賭けた戦いが今始まる」と書いてある作品もよく見るのではにないでしょうか。


■オチをつける

 オチをつける方法もあります。

「女だらけの学校に男は教師の俺ひとり――ただし六十四歳でもうすぐ定年」なんて書かれていたら面白いかなと感じませんか。

 まぁ捉え方次第では成人指定の作品に感じられなくもないのですが。

 最初に期待を高めておいてオチをつけます。

 その落差があるほど読み手に強いインパクトを与えることができるのです。

 上の例なら前半で「ハーレムもの」を期待したけど、後半で「違うのかよ!」とツッコミを入れやすいと思います。

 どれだけツッコミをしてもらえるかがこの手法の要点です。

「はいはい、そうですか」と聞き流されるのがいちばんよくありません。

 必ずツッコミを入れられるような落差が必要です。

 お笑いのセンスが問われますが、落差を意識してあれば意外と思いつきやすいのではないでしょうか。


■サスペンスを醸し出す

 サスペンスを醸し出す方法もあります。

「敵に捕らわれた俺達はロシアンルーレットをやらされるハメになった。リボルバー拳銃は今俺の手の中にある」と書いてある場合です。

 不安感やハラハラ・ドキドキ感が煽られるのではないでしょうか。

「また一人殺された。閉ざされた館の中で生き残っているのはもはや三人しかいない」のようなものもミステリー小説ではいい煽り文句だと思います。

 とくにスタート時点で七人いる設定にしてあれば「いつの段階で三人にまで減るのだろうか」と強烈な不安感を醸し出します。


 以上、代表的な「キャッチコピー」の付け方を見てきました。この中でとくに重要なのが最初に挙げた「具体的な数字を出す」です。

 「抱腹絶倒の90分」にしても「ただし六十四歳でもうすぐ定年」にしても「もはや三人しかいない」もすべて具体的な数字を出していますよね。

 それだけ「具体的な数字」には読み手を惹きつける魔力があるのです。




あらすじで書くべきこと

「あらすじ」の冒頭で「キャッチコピー」を入れると、ひとまず「結論」を述べることができました。次は本文です。

「あらすじ」として書くべきことは「企画書」がメインになります。「誰がなにをする話」なのかを明確にするのです。

「三十五歳で高卒ニートな俺が、なぜか十八歳の才色兼備な少女から好かれる話」なのであれば、そっくりそのままあらすじで使えます。

 これに「主人公がどうなりたい」から始まって「主人公がどうなった」までを加えると物語の概略が揃うのです。

 でも「主人公がどうなった」をあらすじに書いてしまうとその時点で「この小説を最後まで読む必要はないな」と見切られるのでこれは書かないでおきましょう。

 またこの小説のジャンルはなんでしょうか。

 小説投稿サイトではジャンルを決めて投稿しますから、ジャンル別検索結果でも基本的にそのジャンルの作品が引っかかります。

 だからといって本当にそのジャンルで正しいのかは別問題です。

 あなたが実際に書いている小説はただ単に「異世界転生ファンタジー」なのでしょうか。それに恋愛要素を加味しているのなら「恋愛要素がある」ことを読み手に伝えなければなりません。『小説家になろう』では「恋愛の異世界」ジャンルに分類されますので、異世界転生が強いのか恋愛が強いのかで適切にジャンルを決める必要があります。

 今回の例は現実世界での恋愛小説なので「恋愛の現実世界」ジャンルです。

 そのうえで「あらすじ」に「三十五歳で高卒ニートな俺が、一念発起して億万長者を目指したら、なぜか十八歳の才色兼備な少女から好かれてしまった。」と書けば「面白そうな話だから、試しに読んでみてもいいかな」と興味を持ってくれる読み手が必ず出てきます。




キャッチコピーとあらすじだけでは読み手は増えない

 小説投稿サイトの読み手が興味を持ってくれてクリックしてくれるような「キャッチコピー」と「あらすじ」が出来れば、読み手はとりあえずクリックしてくれます。後は内容で勝負してください。

「キャッチコピー」と「あらすじ」はあくまでも読み手にあなたの小説をクリックさせるためだけに存在します。

 第一話を読んで「これなら期待に違わないから読み進めよう」と思ってくれれば万端です。

 もし第一投稿を読んで「キャッチコピーとあらすじとはまったく関係ない話だな」と思われたら、評価は下がりますしブックマークも増えません。

「キャッチコピー」と「あらすじ」はあくまでも魅力的な入り口に過ぎないのです。中のアトラクションや施設がいかに充実しているかで顧客満足度が決まります。

 入り口が魅力的なら、後はどれだけ質のよい中身を調えられるまか。それは書き手であるあなたの筆力にかかっています。





最後に

 今回は「キャッチコピーとあらすじ」について述べてみました。

 小説投稿サイトには「あらすじ」「キャプション」という形で、本文を読む前にこの小説の内容はこんな感じですよとアピールできる場所が存在します。紙の書籍でも裏表紙に書いてあることがありますよね。

 また『カクヨム』では「キャッチコピー」を付けることもできます。

 ジャンルで検索をかけた人が検索一覧からどの小説を選ぶのかは「キャッチコピー」や「あらすじ」「キャプション」を見て判断するのです。

 本編を書くのに夢中で「キャッチコピー」や「あらすじ」「キャプション」には手が回らない、というのでは本末転倒です。

 入り口で内容が察せられるから、読み手はあなたの小説を読もうとします。

 入り口が興味を惹かないのに本編を読もうとする人はまずいません。

 あなたが小説投稿サイトで評価を高めたければ「キャッチコピー」や「あらすじ」「キャプション」でじゅうぶんにアピールすべきなのです。



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