192.再考篇:アイデアをリストアップしよう
今回は「メモ帳と箱書き用紙を持ち歩こう」というネタです。
せっかくひらめいたアイデアをいつの間にか忘れていた、というのはよくある話です。
アイデアをリストアップしよう
小説を書こうと思い立つのは、たいていなんらかのアイデアがひらめいたときです。
アイデアがひらめいたら頭で記憶しようとしないでください。
人の記憶力ほどあてにならないものはありません。
「いや、私の記憶力は円周率を一万桁まで言えるくらいある」という人も中にはいるでしょう。
だからと言ってアイデアを記憶し続けられる証左になるわけではないのです。
夢日記をつける
円周率を百桁憶えている人に「昨夜見た夢を書いていただけますか」と聞いてもまず書けないでしょう。夢は記憶を整理するときに見るものですが、整理がついてしまえば夢の内容を記憶していても意味がありません。だから夢は基本的に起きてからすぐ忘れるように出来ています。
「夢で体験したワクワク・ハラハラ・ドキドキを小説にしたら絶対面白いのに」と考える方が必ずいるはずです。
私も「これを小説にしたら面白いだろうな」と感じる夢をたまに見ます。
夢を小説のネタにしたいのなら「夢日記」を書いてみるのもひとつの手です。
まず枕元にノートかPPC用紙(コピーやプリンターで使う紙)と鉛筆を置いて寝ます。
そして夢を見た日は、起きたら間髪入れずすぐ「夢日記」に夢の内容を書き留めるのです。
こうすると「昨夜見た夢」のアイデアを後日まで保管しておくことができます。
食べたもの日記をつける
また「一か月前に食べた夕食のメニューはなんでしょうか」と聞いてもやはり書けないはずです。
稀に毎日同じ食事をしている人がいますよね。ですがたいていの人は毎日異なるものを食べているはずです。それが一か月ぶん頭に入っている人なんてまずいません。私も一か月前に何を食べたのか記憶にないのです。
食べたものを忘れないためには「食べたもの日記」をつける必要が出てきます。メモ書きででも文字として残っていれば、一か月前に何を食べたのかを忘れることもないのです。
思いついたら即ネタ帳に書き込む
「夢日記」「食べたもの日記」の話をしたのにはワケがあります。
人間、憶えているようで憶えていないことが殊のほか多くあるのです。
だからせっかく小説のアイデアを思いついたのに、後日それを思い出せなくてアイデアを損することがあります。
人間の脳は面白いもので、一度思いついたことは似たような状況に直面すると再び思いつく機能があるのです。俗に「フラッシュバック」と呼ばれます。
良い方向で考えれば「富士急ハイランドで絶叫マシンのド・ドドンパに乗ったときの爽快感」が日常では思い出せないことはよくある話です。
でも再び富士急ハイランドへ行くことが決まっただけでその時の爽快感を思い出せたりします。
悪い方向で考えれば「他人から暴力を受けたときの嫌な気持ち」を日常では思い出せないかもしれません。
ですが暴力を振るってきた人と再び会ったり似たような状況に陥った途端「暴力を受けたときの嫌な気持ち」を思い出してしまうのです。これがPTSD(心的外傷後ストレス障害)と呼ばれるものの正体になります。
だからPTSDを患った人は専門家のカウンセリングを受けて「似たような状態になっても嫌な気持ちを思い出さないように」導いてもらう必要があるのです。
一度忘れた記憶を呼び起こすには「似たような状況」に身を置くしかありません。
スマートフォンをどこに置いたのかわからなくなってとりあえず思いつくまま家探しする人が結構多いのです。
それよりもスマートフォンを置いたときと「似たような状況」を再現することで、思いつくままよりも格段に早く見つけ出すことができます。
一度忘れたことを思い出すのはとても難しいことがわかるのではないでしょうか。
それなら「忘れない」よう手段を凝らす必要があります。
それが「アイデアノート」つまり「ネタ帳」を作る意義なのです。
アイデアがひらめいたら、それが「いい」のか「悪い」のか考えるまでもなく、とりあえず「ネタ帳」に書き込むクセをつけてください。
「ネタ帳」についてはコラムNo.68「中級篇:改めて「小説」とは」のなかで書いていますが、「ニュース」と「イメージ」の二冊作るのがオススメです。できればルーズリーフを使うと後で差し替えたりピックアップできたりして便利になります。
「いいアイデア」なのか「悪いアイデア」なのかは後日「ネタ帳」を開いたときに判断すればよいのです。そして「悪いアイデア」だと思っても消さずに残しておきましょう。
今の判断基準では「悪いアイデア」だと感じても、後年再び「ネタ帳」を読み返したときに「そんなに悪いアイデアじゃないな」「実はいいアイデアじゃないか」と気づくこともあるのです。
だからアイデアの「いい」「悪い」にかかわらず、ひらめいたらなんでも「ネタ帳」に記しましょう。
箱書きにして保存する
小説の場合、ひらめいたアイデアは物語に起こる出来事であることが多いのです。
その出来事を忘れないようにまずは「ネタ帳」に記しておき、その後「箱書き」にしておきます。
「箱書き」にしておくと、小説の中で起こせる出来事のストックが増やせるのです。
それが連載中の「ネタ詰まり」を解消してくれます。
アイデアをひらめくのはおおかた他人の創作物に触れたときです。他人が書いた小説を読んでいるとき、頭の中で情景をイメージしていたらあることをひらめいた、ということがよくあります。
小説だけでなくマンガでもアニメでも、ドラマでも映画でも、ゲームでも。他人の創作物に触れて頭の中で情景をイメージしているときにひらめきが訪れます。
また新聞記事やテレビ番組、ニュースサイトやブログなどを読んでいるとひらめくこともあるのです。
まさにいつひらめきが訪れるか予測不能だと言ってよいでしょう。
だから「ネタ帳」はつねに持ち歩いて、いつでもひらめいたアイデアを書き込めるようにしておくのです。
そして「箱書き」用紙も合わせて持ち歩けば、ひらめいたアイデアを小説の出来事とするにはどうすればよいかを考えてストックしておくことができます。
電子機器は信用できない
「ネタ帳」と「箱書き」用紙はつねに持ち歩きましょう。最近ではスマートフォンを持ち歩いている方が携帯電話契約者数の半数以上を占めるようになりました。
もしスマートフォンへの入力がスラスラとできるようであれば、アイデアを思いついたらすぐにスマートフォンへ記録しておくとよいでしょう。
しかし電子機器というものはいつ壊れてデータが失われるかわかりません。だから出先でスマートフォンに記録しておいたものは、家に帰ったらすぐ「ネタ帳」と「箱書き」用紙へ書き写しておきましょう。
私が最初にマイコンに触れたのは数十年前です。その私ですら「電子機器は信用できない」と確信しています。
何がきっかけで壊れるか本当にわからない。そして一度壊れてしまったら記録してあったデータを完全に復元することが難しいのです。そういう事例を何度も何度も味わってきました。
だからスマートフォンなどに書きつけることを否定はしませんが、保存したいのなら紙に書くべきなのです。
アイデアをリストアップする
本格的に小説を書こう。そう思い立ったら、「ネタ帳」と「箱書き」は本当に頼りになります。
とりあえず「ネタ帳」を見て「どんな物語にしようかな」と「企画書」を考えてみましょう。「誰がなにをする話」なのかを考えるのです。
どんな主人公像がいいのかを「ネタ帳」からリストアップして検討します。そして「このキャラとこのキャラを組み合わせたら面白い人物が出来あがりそうだ」と当たりをつけるのです。
また「なにする」のかを先に「ネタ帳」からリストアップするのもありでしょう。とにかく面白そうな「企画」を考えるときに「ネタ帳」が大いに役立ちます。
「企画書」ができたら「箱書き」のストックを取り出しましょう。そして一枚一枚に目を通して「このキャラにこの箱書きの出来事が起こると面白いな」というものをリストアップしていきます。
もし「箱書き」のストックがない状態で出来事である「エピソード」や「シーン」を考えていくと、それだけでかなりの時間を食われてしまうのです。
ときとしてまったく何も思い浮かばなくて、一度もあらすじが作れないまま書くのを先延ばしにしてしまいます。
結果「小説の書き手になりたい」と思っているだけで「何一つ作品を書けない残念な人」に落ち着いてしまうのです。
将来の夢が「小説の書き手」であるあなたは「まだ一作も書いていない」人ではありませんか。それではあまりにももったいない。
人は人生に一片の長編小説が書けるだけの体験をしていると言われます。そのあなたの体験をぜひ多くの人に読んでもらいたいものです。それには「箱書き」のストックを作ることから始めましょう。
アイデアをリストアップするときの情報の出どころは「ネタ帳」と「箱書き」です。この二つを
「小説が書けない」と悩んでいる人は、まず「ネタ帳」と「箱書き」を書くことから始めてください。きっと小説を書くに足るだけのアイデアが書き溜められますよ。
最後に
今回は「アイデアをリストアップしよう」ということについて述べてみました。
せっかく「小説を書こう」と思い立ったのに「どんな小説を書いていいのかわからない」という理由で書かない人がかなりいます。
それはなにもない状態からアイデアをひねり出そうとするからです。
なんの手がかりもないままひねり出そうとしても、アイデアは湧いてきません。
アイデアが最もひらめくのは日常の生活の中です。そのときにアイデアを書き留められるよう、「ネタ帳」と「箱書き」用紙はつねに携帯しておくとよいでしょう。
もし忘れてしまったらスマートフォンなどに一時的に記録しておいて、帰宅後ネタ帳と箱書きに書き写しておきます。
アイデアをひとところに集めておくと、あとでリストアップするときにラクができるのです。
ぜひ「ネタ帳」と「箱書き」用紙を使って、アイデアを書き溜めていってください。書き手人生の大きな財産になってくれますよ。
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