191.再考篇:小説は家に似ている
書き手のことを「小説家」「作家」と言いますよね。
「なぜ家なんだろう?」というところからヒントを得ました。
小説は家に似ている
「小説家」といえば「小説の書き手」を指す単語です。それとともに「小説」を「家」に見立てた言葉ともとれます。「小説の書き手」のことを「作家」ともいいますが、こちらも「家を作る」と解釈することができるのです。
なぜ「小説」は「家」と関係があるのでしょうか。
資金は創作意欲や情熱
家を建てるとき、まず気になるのが「資金」です。お金がなければ家を建てることはできません。どんなに「家を建てたい」と思っても「資金」がなければ建てることなどできないのです。
小説でいえば「こんな小説を書きたいんだ」という「創作意欲や情熱」に当たります。これがなければそもそも小説を書こうとは思わないものです。
「小説を書くのが好き」だから小説を書く。それは「創作意欲」があるということですよね。「何をおいても小説を書くことを優先する」。それは「情熱」があるということですよね。
ですから、小説を書くには「創作意欲や情熱」を持ってください。それがなければ小説は完成しないのです。
立地は投稿先
資金が用意できました。では次にすべきことはなんでしょうか。
「立地」を選ぶことですよね。
近くに駅はあるのか、幹線道路に近いのか、近くに学校や幼稚園があるのか、商店街やスーパーマーケット・百貨店などの販売店は充実しているのか、近くに名医はいるのか。これらすべてにおいて満足できる「立地」は早々ありません。ですができるだけ理想に沿った「立地」を選びたいですよね。
小説でいえば「書きあげた小説の投稿先」のことです。各出版社が募集している「小説賞・新人賞」に応募したいのか、小説投稿サイトに上げて多くの人に読んでもらいたいのか、同人誌にして即売会で頒布したいのか。他にも地域コミュニティーの情報誌や新聞や雑誌などに寄稿するなどという変わり種もあります。
出版社の「小説賞・新人賞」を獲得すれば商業ライトノベルの書き手に最も近づくのです。ですが各募集に応募してくるのは紙の雑誌主催の場合で二千作を超えるとも言われています。その中できちんと小説の形をしているものは五十作以下で二、三十作あればいいほうだと書かれている書籍もあるのです。
となれば、「紙の書籍」としての「原稿のルール」を守っていて「物語の読ませ方」がきちんと整っていれば一次選考は通ります。ただ選考過程がすべてオープンにされているわけではないため、自分の小説が本当に「原稿のルール」を守っていて「物語の読ませ方」がきちんと整っているのかを知る術がありません。
最初から出版社の「小説賞・新人賞」を狙いに行くのは「暗闇を手探りで進んでいく」状態に似ています。書き手がどこを歩いているのか「自分の書いた小説が整っているのか」を客観的に捉えることが難しいのです。
だから現在はやみくもに「小説賞・新人賞」を狙いに行くのはやめたほうがよいでしょう。
同人誌を即売会で頒布するというのは、自腹を切って「紙の書籍」にできます。しかしどれほどの数を頒布できるかは未知数です。
知名度のある書き手であればファンが付いてさまざまな即売会で新作をもらってくれるでしょう。でも知名度がなければ誰にも頒布できずに終わります。
同人誌は知名度が出てからやるべきものであって、始めから「同人誌ありき」で行くとたいてい大失敗するものです。
現状で最もオススメしたいのが小説投稿サイトに掲載することです。
最初は誰も読んでくれないと思います。
でも小説の内容が面白ければ、連載を重ねていくたびにまた新たなシリーズの連載を始めていくたびに読み手は確実に増えていくのです。
そうやってフォロワーさんを少しずつでも増やしていくには「小説賞・新人賞」に必要な「物語の読ませ方」も身につける必要が出てきます。
投稿していくたびに「物語の読ませ方」を工夫して
フォロワーさんが増えてくれれば、同人誌を出したときに即売会に来てくれる人が確実に増えていきます。
つまり現状で「小説賞・新人賞」を狙うにしても同人誌を頒布するにしても、まず小説投稿サイトで腕前を磨いてフォロワーさんを増やすことが大前提だということです。
だからまずは小説投稿サイトを選びましょう。
設計図はジャンル
立地を確保したら「どんな家を建てるのか」つまり「設計図」を作る必要があります。
京都のように立地にふさわしい外装でなければならない家もあるからです。また家の使い勝手も「設計図」が左右します。
小説でいえば「どのジャンルの小説を書くか」を決めるのです。小説投稿サイトにも「あるジャンルに強い」という傾向があります。地域柄とでも言いましょうか。
最大手の『小説家になろう』では「異世界転生ファンタジー」「異世界転移ファンタジー」が最も人気があります。
他のジャンルは比較的弱いのですが、登録者が百万ユーザーを超えていますから読み手の分母が桁違いなのです。
だから「異世界転生ファンタジー」「異世界転移ファンタジー」以外のジャンルであっても『小説家になろう』に掲載することは悪くない選択肢になります。
また『小説家になろう』は規約として二重投稿が可能になっていますので、他の小説投稿サイトに上げた作品であろうとも『小説家になろう』に掲載することが可能です。ただし「○○にも投稿しています」と断りを入れる必要はあります。
老舗の『エブリスタ』『アルファポリス』では「女性向け恋愛小説」が強いです。圧倒的というほどではないのですが、ランキングを見ると上位にくるのはたいてい「女性向け恋愛小説」になっています。
それだけ女性の利用者が多いとも言えるので、女性向けの小説を書いている方は『エブリスタ』『アルファポリス』に主軸を置いて『小説家になろう』へ二重投稿するとよいでしょう。
ライトノベル界の雄であるKADOKAWAが共同運営している『カクヨム』は「ライトノベル」であればどんな作品でも人気が出ます。ジャンルの強弱というよりも、投稿している作品が「ライトノベル」であればよいのです。
『カクヨム』ではここでしか書けない二次創作の作品があります。『カクヨム』にしか書けない二次創作作品は、たとえば『pixiv小説』には書けない決まりになっているのです。そこはじゅうぶん留意してください。
そして『pixiv小説』『ピクシブ文芸』です。
まず『pixiv小説』は「女子向け二次創作」が主流です。次いで「男子向け二次創作」が続きます。とはいってもその比率は九:一と、圧倒的に「女子向け二次創作」が強く、デイリーランキングはほぼ独占されているのです。ただし幸いなことに「女子向け」と「男子向け」ではランキングを分けて表示できます。「男子向け二次創作」を書いてもランキングに載れないというわけではありません。
ですが肝心の「男子向け二次創作」は渡航氏『やはり俺の青春ラブコメはまちがっている。』略して『俺ガイル』の二次創作でなければ上位に入れないのです。「男子向け二次創作」ランキングで目立ちたければ『俺ガイル』の二次創作を書くしかないという縛りがあります。「オリジナル小説」を投稿しても読んでくれる人はほとんどいません。
この「オリジナル小説」を読ませるプラットフォームとして誕生したのが『ピクシブ文芸』です。現在はまだ一日に百作ほどしか投稿がないため、閲覧者はまだ少ないのですが読み手が「みんなの投稿作品」の中から選ぶのにも苦労はしませんし、九つのジャンルで読みたいものを探すこともできます。
(2019年5月時点でも新規投稿は少ないままです)。
その中でもランキングに食い込むのは多くが「女性向け恋愛小説」です。とくにpixivアカウントがあれば「R−18」つまり成人指定の「女性向け恋愛小説」が上位を独占していることがわかると思います。他のジャンルは投稿作品数自体は多いのですが閲覧されづらいようで、ランキングに載るのは苦戦するでしょう。
大黒柱はテーマ
家には大黒柱が不可欠です。現在は鉄筋コンクリート建築の家も増えましたから大黒柱を用いない家も増えましたけれども。
小説でいえば「テーマ」に当たります。昔ながらの小説スタイルである「純文学」や一般ウケを狙う「エンターテインメント小説(大衆小説)」なら大黒柱である「テーマ」は不可欠です。
ライトノベルにも「テーマ」はあったほうがいいのですが、小説投稿サイトで連載するときは取り立てて「テーマ」の無い作品が相当数あります。
楽しんで書ければそれでいいんだ、読み手が喜んでくれる展開を書けばいいんだという思考に陥ってしまうのです。だから「テーマ」が無くても話題や評判になることがあります。このように小説投稿サイトで連載する作品は大黒柱のない「鉄筋コンクリート建築」といえるでしょう。
でも「鉄筋コンクリート建築」では「紙の書籍化」はされづらいと思います。出版社には昔ながらの編集さんがまだ大勢いますから、「小説にはテーマが不可欠だ」という「木造建築」派の意見が根強いのです。
それでもここ五年ほどで「鉄筋コンクリート建築」の「紙の書籍」が増えてきたように思えます。編集さんの新陳代謝で「テーマ」の見られない作品でも評価されるようになったのでしょうか。
柱と壁は登場人物とコミュニティー
大黒柱以外の柱は建物を分散して支える役割をし、柱に筋交いをして壁を仕立てて間取りを決める役割があります。
小説でいえば「登場人物」と「コミュニティー」に当たります。柱である「登場人物」が立っていて、それを繋いで壁を作ることで間取りを決めると「コミュニティー」が形成されていくのです。
通路と階段は物語の展開
間取りが決まり部屋ができたら、それを結ぶ通路と階段が必要になります。
小説でいえば「物語の展開」に当たるでしょう。人々をどのように関係づけるかを決めていきます。
主人公陣営と「対になる存在」陣営の二部屋というアパートのような構造もあるでしょう。
学園ものならクラスメートのコミュニティーがあれば、家族のコミュニティーもあります。
それらがどのように関係しあっているのか。コミュニティーの関係が物語を展開する筋道になります。
屋根は結末
内部構造がすべて出来あがれば、後は屋根をしっかりとしたものにするだけです。(電気・ガス・水道などの構築物は考えないとして)。
小説でいえば「物語の結末」に当たります。登場人物という柱と間取りというコミュニティー、通路と階段という物語の展開がすべて決まれば後は屋根である「結末」をしっかりと組み上げれば家は完成します。
通れない部屋はないか。一階から二階を踏み入れることなく三階に行くような階段はないか。物語に関係のないコミュニティーはないか。直接関係しないコミュニティーはないか。
これらをしっかりとチェックし、すべて満たしていたらきちんと「結末」を作りましょう。
小説投稿サイトで連載をしていると、いつまでも結末を迎えられない作品が生まれてしまいます。
延々と階層を増やしていって二階建てのつもりが高層ビルになってしまうような状態です。いつになったら屋根が付いて建物として完成するのかがまったく見えません。
そうならないためにも、連載を始める前に「結末」をしっかりと形作っておく必要があるのです。
そして連載はその「結末」に向かって流れるように展開させます。終わり方が決まっているから安心して連載を続けられるのです。
しかし読み手の求める展開で連載を続けていくと、当初用意していた「結末」では
そのときは新しい屋根である「結末」を作る力が求められるのです。
その修正力がないのならば読み手にウケる展開ではなく、当初予定していたとおりの展開で書ききってください。
最後に
今回は「小説は家に似ている」ことについて述べてみました。
「小説家」「作家」という単語をずっと眺めていてひらめいたネタなので展開に強引さがあることは否めませんが。まぁこんな日もあっていいのではないでしょうか。
今日は筆休めのつもりだったのですが、思いついてしまったら書かずにはいられないんですよね。それにストックも心許なくなってきているので、ネタがひらめいたらコラムにしていかないと。
おかげさまで、2017年年4月17日から始めた本コラムも毎日連載半年を過ぎて本数も191本目となりました。
(今回は『ピクシブ文芸』にて2017年10月19日に投稿したぶんになります)。
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