162.連載篇:書き出しと最終シーン

 今回は「書き出し」と「最終シーン」を呼応させることについてです。





書き出しと最終シーン


 小説において最も大切なのは「書き出し」です。

 ここで駄目と判断されれば以降の連載は読まれず、次第に閲覧数や評価やいいね、ブックマークが伸びなくなります。

 商業ライトノベルは現在多くが電子書籍としても販売されているのです。

 電子書籍では冒頭数ページを「お試し」で読むことができるところがたくさんあります。

「書き出し」でうまく読み手を掴めれば電子書籍は買われていくのです。

 小説投稿サイトにおいては「あらすじ」「キャプション」が含まれます。ここでどれだけ読み手を惹きつけられるかが閲覧数を左右するのです。




あらすじやキャプションとタイトルとキャッチコピー

「あらすじ」「キャプション」の表示文字数制限は小説投稿サイトによって異なります。『小説家になろう』なら最初の五百字、『ピクシブ文芸』では最初の二百字、『カクヨム』なら最初の八十八文字です。

 ここで読み手の心をぐっと捕らえるようなうまい文章を書かなければなりません。それも本文よりさらに洗練された文章である必要があります。

 本文の語り口のまま書いてもいいですし、異なる語り口でもかまいません。

 要は「こんなことが展開される小説ですよ」ということを過不足なく表せるかどうかです。

 小説家というより短文で巧みに説明するコピーライターに近い才能が要求されます。


 このコピーライターとしての才能は「小説のタイトル」や『カクヨム』の「キャッチコピー」で如実に表れます。

 小説の内容を短い文字数でいかに説明しうるか。それが「小説のタイトル」「キャッチコピー」に求められます。

 とくに最近のライトノベルは「小説のタイトル」でいかに内容を表せているかがすべてです。

 近年のライトノベルの多くが小説投稿サイト発になります。

 小説投稿サイトではジャンルと「キーワード」「タグ」で検索して、出てきた「小説のタイトル」「キャッチコピー」を読んで「これは面白そうな作品だな」と思ってもらえるかどうか。

 思ってもらえれば次に「あらすじ」「キャプション」が読まれます。

 そこに書かれている設定を読んでさらに「この小説は面白そうだ」と読み手が確信を持ったら閲覧数が増えるのです。

 つまり小説の書き手には「コピーライター」としての才能も求められます。

 小説賞に投稿する「三百枚」や超長編の連載小説といった長い文章を書き切る能力の他に、「コピーライター」としても優秀であること。それが現在のライトノベル界を席巻している書き手に共通している要素です。




書き出しの注意点

「三百枚」のときは最初の三ページ以内できれば冒頭一文で主人公を出すべきです。

 連載小説なら「書き出し」で主人公は最初の一ページ以内に登場させなくてもかまいません。

 ただ舞台説明が長々とされれば読み手はそれだけで飽きます。

 読み手は共感できそうな主人公の描写が読みたいのです。だから最低でも三ページ以内に主人公を登場させましょう。

 可能であれば「三百枚」同様、冒頭の一文目から主人公を登場させたほうがよいのは言うまでもありません。


 真っ先に人物を登場させれば、読み手はその人物が「主人公」だと思い込みます。

 世の大半の小説は「最初に登場するのが主人公」であることが多いからです。

 しかしその期待を裏切ってその人物をやっつける者が出てくることもあります。やっつけた人物のほうが実は主人公だったという変則パターンです。

 変則パターンで主人公を登場させるときは「真っ先に登場した人物が主人公の視点によって語られる」ようにするとひじょうにわかりやすくなります。

 もし真っ先に登場した人物の視点で語られたら、主人公が登場して視点を持つ者が倒された途端、主人公の視点に切り替わってしまうことになるのです。

 このような視点のブレを読み手はすぐに看破します。「あちこちに視点が移りまくる作品なのかな」と思われたら、その時点で読み手は小説の続きを読もうとはしなくなります。まとまりのない小説だと思われるからです。

 だからできれば最初の登場人物は主人公であることが望ましくなります。

 でもこのような「書き出し」をどうしてもやりたいと思う書き手も多いでしょう。

 その場合は「神の視点」を用います。真っ先に登場した人物のことも主人公のことも手にとるようにわかるのが「神の視点」です。

「神の視点」なら最初の登場人物が倒されてもそのまま物語を語り続けることができます。ただ読み手に主人公へ感情移入させづらくなるのが欠点です。

 このような「書き出し」部分だけを「神の視点」に設定するのです。


 冒頭で主人公周りのことを説明していき、舞台設定を披露していきましょう。

 このとき設定を一気にすべてを見せるのではなく、物語の進行に合わせて都度開陳していくと人物描写と絡み合ってうまく舞台設定を読ませることができます。

 ただし出来事イベントが起こってから説明するのではなく、説明した後に出来事イベントを起こすようにしてください。

 出来事イベントが先になると「ご都合主義」と読み手に思われかねません。

 これも読み手が離れていく原因なのでやめたほうがいいのです。


 出来事イベントの前ならいつでもいいわけではありません。

 直前に説明するのは後づけよりもましではありますが「ご都合主義」のにおいを感じさせます。

 できれば「場面シーン」が変わる前までには説明し終えているべきです。

「書き出し」では人物描写と舞台設定を織り交ぜて書くことになります。




最終シーンの注意点

 そのエピソードの「最終シーン」にたどり着くまでに次回以降の舞台設定を開陳しておくべきです。

 前回以前に書いてあれば「ご都合主義」にはなりません。むしろ「伏線」だと思って肯定的に読んでくれます。

 連載小説では次の「三百枚」に向けて前の「三百枚」で次回以降の設定を披露しておくべきです。出し惜しみしてはなりません。

 読み手が期待に胸を高鳴らせて続きを待ち望んでくれ、投稿されたらすんなりと読んでくれるのも、次の舞台となる場所の設定が事前に与えられているからです。

 新しい「三百枚」が登場するたびに設定を書く必要があるのは「書き出し」と同じです。

 ですが前回以前に次の舞台について触れていないと、読み手としては先が読めないため不安感が強くなります。

「次のエピソードも面白いのだろうか」という不安です。

 不安を抱えたまま読んでみたら面白かった。それならなんの問題もありません。

 しかし読んでみたら失望した、という場合もあります。そうなったら二度と読み手は連載小説を追ってくれなくなるのです。

 フォロワーさんが段々と減っていきます。これまで築き上げてきた信頼関係が台無しです。


「最終シーン」は、できれば「書き出し」と呼応するような内容にするのが望ましいです。

「勇者になるために村を出た」のなら「勇者になって村に戻る」と収まりがよいとは思いませんか。

 王女を助けて結婚して王城に住まうという出世物語もありますが、その場合でも一度は出発した村に戻るシーンを読みたいところです。

 恋愛小説で「好きになれる人に出会った」という「書き出し」なら「好きな人に告白した後」を書くとぴったりと来ます。

 バトル小説で「宿敵を倒したい」のなら「宿敵を倒した後」が読みたいですよね。


 このように「書き出し」が決まると「最終シーン」もある程度定まります。

 その予想を裏切るような小説もありますが、よほど綿密に計算して「書き出し」を書いていないと、唐突感が強くなって「ご都合主義」との批判を浴びやすくなるのです。

 だから私は「佳境クライマックスから結末エンディングへ、そして遡りながらあらすじを書く」ことを推奨しています。

 先に結末がわかっていれば「書き出し」や伏線を綿密に計算できるからです。

 物語の本筋と関係ないシーンを登場させないためにも有効な手法となります。

「書き出し」から「最終シーン」までを順に書いたら、ときに本筋と関係ないシーンが混じってしまうものです。

 閑話休題・筆休めとしてそういったシーンを追加するのは悪いことではありません。

 でもそういうシーンはできるだけ短くしないと「お遊び」が過ぎて読み手がれます。読み手の心に敏感な書き手であれば、閑話休題・筆休めはできるだけ短くするものです。

 本当に一場面シーンだけ挟む程度になります。「エピソード」になってしまうと「お遊び」が過ぎます。そういうことは「外伝」でやってください。





最後に

 今回は「書き出しと最終シーン」について述べてみました。

 連載小説の「書き出し」は「三百枚」と同様に主人公をすぐに出しましょう。

 そして「最終シーン」までに次の「三百枚」のための設定を開陳しておくのです。

 そして「最終シーン」はそのエピソードの「書き出し」と呼応した終わり方にします。

 次回以降の設定はすでに書いてあるので「最終シーン」であえて取り上げる必要もありません。

 今回の「三百枚」はきっちりと解決してある。これがたいせつです。



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