160.連載篇:取材とひらめき
今回は小説を書くのに必要な「取材とひらめき」についてです。
ノンフィクションはもちろんですが、異世界ファンタジーであってもできるだけ情報収集をしておきましょう、というお話です。
取材とひらめき
小説を書くときに必要になるのが「取材」してネタを作ることです。
学園が舞台なら学園はどう運営されているのか、警察が舞台なら警視庁の捜査一課はどういうときに動いているのか。
そういうことを知らずに学園ものを書いたり刑事ものを書いても多くの読み手から「いや、今の学園にそんな規則ないから」「なぜただの窃盗事件(万引きは明確な窃盗罪です)に捜査一課が動いているのか」と指摘されます。
またネタは「ひらめき」で捻出することも可能です。ひらめきがなければどんな書き手でもネタに詰まります。
「取材」できない小説を書くときはとくに重要になるのです。
取材をしていないと
えっ、でもライトノベルで異世界を舞台にした小説なら、すべて架空で自分が思い描いた世界を書けばいいだけでしょう。そう思っていませんか。
それがすでに落とし穴なのです。
小説賞の下読みさん(小説賞に応募された作品を何人かの下読みさんが分担して候補作を絞り込みます)も、小説投稿サイトに投稿されている作品をよく読んで目の肥えた読み手の方も、あなたの作品に厳しい目で指摘してきます。
「ここは違うだろう」というコメントをたくさん受けるはずです。でも腐らないでください。私もちょくちょく指摘されますから。
取材の仕方
まずあなたの小説が警察ものや医学ものの場合、その分野の書籍がかなりの数出回っていますから、それらを買い込んで勉強しましょう。
それでも完全な情報というのは現場にしかありませんから、警察なら広報課にでも行って聞いてみる手もあります。
学園ものも取材がなかなか難しいのですが、自分の出身校に電話して「こういうことが知りたいんですが」と取材の申込みをしてみるべきです。
自分が在籍していた頃とは校舎も部屋割りも異なっていることがよくありますし、現在の学園ではどんなものに人気があるのかも知りたいところです。
学園内でのスマートフォンの利用に関する制限なども聞いておいたほうがいいでしょう。あなたが作る学園にはモデルがなく取材ができない。そう思う方もいますよね。
そこに赴いたら見たり聞いたり感じたりしたこと、つまり「五感」と「直感」をとにかくメモしておきましょう。
とくに取材先では関係者から丁寧な説明を聞くことがあります。メモは「聞いたこと」を書くものだと思いがちになるのです。
でも実際は「見たこと」が多くネタになります。
小説は感覚と感情を文章に落とし込む「一次元の創作」です。聴覚だけではただの「会話文」の羅列かよくて「ト書き」になります。
いかに「五感」と「直感」を文章で読ませるか。その技術が小説の書き手には求められるのです。
そうして「事実とそれにまつわるエピソードと正確な数字、「五感」と「直感」で得たこと」を集めていきましょう。
取材できないなら規則を作る
完全にオリジナルな異世界ファンタジーやモデルのない学園を舞台にしたいのなら、その異世界や学園にどのような規則を設けるかをかなり細かく設定しておきましょう。
学校を卒業してから日の経つ人なら学生手帳はすでに返却したり捨てている可能性が高いですし、異世界にはなんの手がかりもありません。
異世界ファンタジーなら「この異世界では何ができて何ができないのか」「
「完全にオリジナルな異世界」というのはそのくらい作るのが難しいのです。
学園なら「校則としてこういうものを作った場合、生徒たちはどの程度自由に行動できるのか」が大問題になります。
「生徒たちは必ずどこかの部活に所属しなければならない」という規則があれば、主人公もどこかの部活に入っていなければおかしいですよね。
「スマートフォンやタブレット端末を持ってきてはならない」とすれば生徒たちはTwitterやInstagramやLINEなどを平日はあまり使えないですよね。となるとどうやって生徒たちは平日にコミュニケーションをとっているのかを考えないといけなくなります。
まぁ前述の「部活必須」にすればその中ではコミュニケーションがとれるわけですが。
ひらめいたら必ずメモをとる
ネタを集めたり規則を作ったりするのはPCやスマートフォンを使っているとき以外でも浮かんでくるものです。
私はとくに湯船に浸かっているときと、本屋の開店前に読書をしているときによく思い浮かびます。
そのため、お風呂ならできればメモ帳をお風呂場に近いところにも置いています。
スマートフォンや携帯電話が使える状況なら、メモ帳アプリやメールに書き込んで残しておくと便利です(私はiPod touchに記録しています)。
とくに電車やバスで移動しているときや喫茶店や飲食店で食べたり飲んだりしているときにアイデアが出てきやすい。
ひらめかないで悩み続ける人はとにかく移動したり場所を変えたりしてみてください。
そういう意味では図書館で音楽を聴きながら考えるのは最良の方法かもしれません。
多様な書物が置いてあるので思いついたひらめきの裏をとるのが容易になります。
ひらめいたら箇条書きでかまわないので必ず残しておきましょう。
人間どんなに記憶力に優れていても、ひらめいたことはすぐに忘れてしまうものです。
だからひらめいたらすぐにメモを残しましょう。
それがたとえ正しくなくても、後々使えるネタや規則になる可能性もあるのです。
ネタ帳は漫画家や漫才師が書くものと思われがちですが、小説の書き手にこそネタ帳は必要になります。
メモからさらに連想する
メモの箇条書きがある程度たまったなと思ったら、一度すべての箇条書きを一歩引いて見てください。
すると「これとこれって○○の点で同じだな」というひらめきが湧いてくるものです。
そこでまず関連づけられそうな項目を近くに寄せて「○○」という見出しをつけておきましょう。
そのひらめきから「では○○に関連した別のことはないかな」と考えてみるのです。
するとまたひらめきが生まれてきます。そうなればまた箇条書きを増やしていけるのです。
ひらめき⇒共通点⇒ひらめき⇒共通点⇒……とこのようにしてどんどんネタをひらめいていきましょう。
そうすれば面白いほどたくさんネタが思い浮かんできます。
ありふれた日常からでも異世界ファンタジーに使えそうなネタが生まれるものなのです。
書くネタに詰まった書き手の人も、一度一歩引いてこれまでのネタを振り返ってみましょう。
想定外の共通点が見えてくることがあるはずです。
そのためにも「ひらめいたら必ずメモをとる」ことを忘れないようにしましょう。
最後に
今回は「取材とひらめき」をテーマとしてネタづくりについて述べてみました。
現実にあるものについては綿密に「取材」して「五感」と「直感」を残さずメモして起きましょう。
現実にないもの、また取材したネタからさらにネタを広げたり掘り下げたりするには「ひらめき」がたいせつです。
とくに五十代でもライトノベルが書きたいという方は、「取材」をして現在の中高生について学ばなければなりません。
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