157.連載篇:相関図を書く

 連載篇二つ目は「相関図」についてです。

 知らない方もいそうですよね。

 でも連載するなら書けるようになりましょう。





相関図を書く


 「三百枚」の小説を連載することになりました。

 そこで出発点となる「三百枚」で主人公だった人物を深掘りしていくのです。

 すると当然「三百枚」で出てきた人物との間も深く考える必要が出てきます。

 だからといって主人公を放り出して「対になる存在」と脇役のキャラを深掘りしていったらどうなるでしょうか。

 まずまとまらなくなると思います。


 そこで「相関図」を書く必要が生まれるのです。




相関図とは

「相関図」というものを見たことがない人もいるかもしれませんね。

 簡単に言えば「誰と誰がどういう関係にあるのか」を図にしておくことを指します。

 テレビで新ドラマが始まるとき、テレビ番組専門雑誌で顔写真と配役名、そしてそれぞれの登場人物がどういう人間関係なのかを示す矢印がたくさん引かれた図を見たことはありませんか。

 今はまさに10月改変期なので、10月スタートの新ドラマの紹介を専門雑誌では積極的に行なっています(『ピクシブ文芸』投稿は2017年9月です)。

 ですので「相関図を見たことがない」人は本屋さんに行ってテレビ番組専門雑誌を立ち読みでパラパラとめくってみてください。

 必ずといっていいほど「相関図」が載っていますよ。


 似たものに「家系図」があります。

 これはほとんどの方が歴史の授業で見たことがあるはずです。

 男性と女性が横に並んで書いてあって横線で繋いでいます。これが結婚していることを表し、その横線から縦線を引いて書かれている名前が二人の子どもになります。その子どもが別の異性と結婚して子どもを作って――という図です。

 平安時代の天皇家と藤原家との「家系図」が真っ先に思い浮かぶのではないでしょう。

 このように家族関係を表すために書かれている図が「家系図」になります。

 つまり「家系図」も「相関図」の一種です。




主人公との関係

 まず主人公と他の登場人物との関係を明確に決めてください。

「対になる存在」はバトル小説なら対戦相手ですし、恋愛小説なら意中の異性ということになります。

 その立ち位置を相関図で明確にしておきます。


 そして主人公側の人物を列記して主人公と各人物に線を引き「どういった関係」なのかを書き込んでいくのです。

 相関図を作っておくと連載小説を書いているときに人間関係が怪しくなることがなくなります。

 作っていない場合は書き手の記憶に頼ることになるのです。

 そして連載が長期化するほどたいてい記憶違いを起こします。

 ただ名前を知っているだけの知人だったはずの人物が親友扱いされてしまうようなことが起こりえるのです。

 そんなことが起こってしまえば、熱心な読み手は手のひらを返したように一気に離れていきます。

 記憶に頼ることはとても危険なのです。

 人間関係はきっちりと図にして残しておくことが記憶違いを防ぐ初歩になります。




対になる存在との関係

 主人公側はもちろんのこと「対になる存在」側の人物についても同様にして相関図を書いていきます。

 ここで肝心なのが「主人公側」とも関係を持っている人物についてです。

 恋愛小説では主人公側とは幼馴染みで、「対になる存在」側とは友人といった人物が往々にして出てきます。

 そういう人物は主人公側と「対になる存在」側との間に配置して線を引きやすくしておきましょう。




登場人物同士の関係

 ここまでさまざまな人物が出てきたと思います。

 その中で誰も「他の人物と関係を持っていない」状態ということはまずありません。

 たとえばAとBは結婚していてCという子どもがいるとか、XとYはケンカをしていて共通の友人Zが仲裁に回っているとか。

 また主人公陣営に寝返ろうとしている人もいるでしょうし、「対になる存在」陣営に寝返ろうとしている人もいるでしょう。

 そういった人間関係すべてを線で繋いでいくのです。




相関図の整理

 慣れないうちは人物を適当に配置したため関係線が複雑に走ってしまってよくわからなくなると思います。

 そうなったら「相関図」を改めて整理していきましょう。

 原則として、関係線を引いた人をできるだけ近づけてやります。

 これをやるだけでかなりわかりやすい「相関図」が出来あがります。

 「相関図」を作り終えれば、登場人物の人間関係は一目瞭然です。

 誰が誰の幼馴染みで、誰と誰がライバルなのか。

 もう迷うことはありません。




相関図の更新

「相関図」を見ながら「あらすじ」から「箱書き」を創っていき、「プロット」に落とし込んでいきます。

 そこから文章を起こしていき、物語は進んでいくのです。

 しかも人間関係はいっさいブレません。


 物語が進んでいくと、人間関係が影響を受ける場面は必ずあります。

 たとえばある依頼を解決したら依頼人と仲良くなった、というようなことです。

 渡航氏『やはり俺の青春ラブコメはまちがっている。』の由比ヶ浜結衣のことですね。

 そのときは新たに「相関図」を起こして更新していきます。

 前に作った「相関図」は保存しておいてください。本編でいつ過去に触れるかわからないからです。

 人間関係に変化ができたら都度新たに「相関図」を作っていけば、その時点での人間関係がひと目でわかります。

 とくに初心者の書き手はどの時点で人間関係が変わったのか曖昧になってしまい、結果として物語と文章に乖離が生じてしまうのです。

 そして名うての書き手であっても連載が長期にわたると、同様に「人間関係が変わったのに物語がおかしな方向に進む」ことがままあります。

 そういう点からしても「相関図」を作っておくことには大きな意義があるのです。




表と裏

 人間関係には「表と裏」があります。表では親友ですが裏では恋のライバル、というのが恋愛小説では鉄板の流れです。このようなとき「相関図」一枚に書き込んでいってもいいのですが、余裕があるなら「裏の相関図」を作りましょう。

 見かけの人間関係は文章で直接書くことになりますが、裏の人間関係は話の流れによって変わっていくことがよくあります。

 これをすべて一枚の「相関図」で表そうとすると、かなり複雑な相関図になってしまい、結果「ひと目で人間関係がわかる」という主目的を果たせなくなるのです。

 これでは「相関図」を書いた意味がありません。

 複雑になるようなら「裏の相関図」を作りましょう。

 そうすれば表の人間関係と裏の人間関係がひと目でわかります。

 バトル小説なら主人公が倒さなければいけないのは本当は誰なのか。

 これも「裏の相関図」があれば一目瞭然なのです。





最後に

 今回は「相関図」について述べてみました。

 小説には実にたくさんの人物が登場します。彼ら彼女らの人間関係は、連載が長くなるほど書き手にすらわからなくなってしまうのです。

 その打開策が「相関図」です。

 これがあれば人間関係の把握は容易になりブレることがなくなります。

「相関図」恐るべし。

 初心者はもちろんのこと、長期連載をしている名うてな書き手こそ「相関図」で人間関係を明確にしていくとよいでしょう。



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