105.実践篇:同人誌として販売するには
さすがにもうネタが続きませんね。
と言いながら少し出てきたので一本書いてみました。
同人誌として販売するには
「小説同人誌」という存在があります。
そもそも同人誌は小説や随筆を書くのが好きな人たちが集まって一つの書籍にして販売したところから始まっているのです。
それら「小説同人誌」を読みたい人が一箇所に集まって皆が販売できるルートを作ること。そこから「同人誌即売会」が生まれたのです。
マンガの同人誌はそれよりはるかに後になってから誕生しています。だから「コミケ」と略される「コミックマーケット」よりも前から「同人誌即売会」という存在はあったのです。でも今では「同人誌」といえば「商業販売されていないマンガ」と世間から見られています。逆転現象ですね。
小説同人誌を作るべきか
せっかく超長編の連載小説を書きあげたのです。お金に換わるのであれば「小説同人誌」を作ることも手段としてはありえます。
頭になかった書き手も、ここで言及したことにより候補の一つとして記憶に残るでしょう。
ですが小説投稿サイトで連載した小説は、いつ出版社の目に止まるかわかりません。
この連載小説を商業ライトノベルとして販売したい。そう出版社が思っていても、先に「小説同人誌」として即売会で販売されていたとしたら。
おそらく出版社は商業ライトノベルにすることをあきらめるでしょう。
いつまで経っても出版社から連絡が来ない。
小説投稿サイトのランキングも振るわない。
でもせっかく苦労して書いたのだからお金に換わるものから換えておきたい。
そうお思いの方は、これから出すいくつかの条件をクリアできるなら「小説同人誌」を作って即売会で販売することを検討してください。
二次創作は禁止されていないか事前に確認する
どんなに人気が高くても「二次創作」の連載小説は商業ライトノベル化されることはありません。
もしオリジナル作品の原著者が了承してくれるようなことがあれば話は別ですが。そんな気前の良い原著者はまずいません。
となれば「二次創作」の連載小説は「小説同人誌」にすることが視野に入ってきます。
ただし原作の公式Webサイトで「二次創作物の販売を禁止する」旨の記載がある場合は、どんなにウケのよかった「二次創作」連載小説であっても「小説同人誌」にすべきではありません。
著作権法に抵触するからです。
「自由に二次創作して即売会で販売してもいいですよ」と書いてあるのなら「小説同人誌」を作るために準備を始めることになります。
まずどれだけの需要があるのかを調べなくてはなりません。
「小説同人誌」を百部刷ったところで、需要がなければ売上はゼロです。製本にかかった経費だけが消えてなくなります。
お金に換わるどころか赤字になってしまうのです。
需要があるならどの程度の人が買ってくれそうかを読む必要があります。『pixiv小説』でブックマークがどれだけ付いたから、これだけ刷っても完売できるだろう。そういう読みをしなければならないのです。
即売会でも需要のあるジャンルの「二次創作」だから百部刷っても完売できる。
そのような決断をしなければなりません。
決断できないのなら「小説同人誌」など作らないほうがはるかにましです。
お金がムダになりませんから。
同人誌即売会での二次創作小説同人誌
そもそも「コミケ」では「小説同人誌」の需要は限りなく低いのです。
前述したとおり現在では「同人誌」イコール「商業販売されていないマンガ」という一般認識があります。
そんな中で「小説同人誌」がどの程度の数量をさばけるのか。
とくに世界最大規模の同人誌即売会である「コミケ」では一日に十万人単位の来場があります。その中のどれほどが「小説同人誌」を求めているのかはデータにありません。しかしそれほど多くはないはずです。
でも「二次創作」の「小説同人誌」であれば、オリジナル作品愛好家の中には「すべての同人誌を購入してコレクションしたい」と考えている方もある程度います。それが十万人単位のうち何人いるのか。
これをチェックしておく必要があります。
「コミケ」に代表される同人誌即売会の会場へ頻繁に足を運んでください。
そして「小説同人誌」を販売しているサークルでどれほどの「小説同人誌」が売れていくのかを観察するのです。
売れっ子サークルだと判断基準になりません。
中小規模のサークルをチェックしていれば、どの程度「小説同人誌」の需要があるのかが見えてくるかと思います。
同人誌即売会については後日まとめて言及するつもりです。
オリジナルの連載小説は
いくつでも新しい世界観を作り続けられる書き手はそう多くありません。そういう書き手は必ず日の目を見ますので、一作でも「小説同人誌」にしないほうがいいでしょう。
さまざまな世界観を作り続けられる自信があるのであれば、出版社から連絡が来ない場合に限り「小説同人誌」として即売会で売ることも考えてみてください。
でも商業ライトノベルになったほうが確実に儲けが出ます。
なにせ書き手はいっさい経費を負担することなく、原稿料と印税だけが手に入るわけですから。
目先の利益をとるか、将来のために温存しておくか。「オリジナルの連載小説」はその見極めが重要になります。
「オリジナルの連載小説」の傍ら「二次創作の連載小説」を書いていけば、その「二次創作の連載小説」は同人誌即売会で売るチャンスも出てくるでしょう。
また、ひとつの世界観で、ある立場から描いた連載小説と、別の立場から描いた連載小説のような場合は注意が必要です。
ひとつでも「小説同人誌」にしてしまうと、もし別の立場から描いた連載小説が出版社から依頼されても、その作品を商業ライトノベルにすることが難しくなります。
世界観を統一して主人公や時代が異なるタイプの連載小説を書きたい人は「小説同人誌」を作るべきではありません。
せっかくのチャンスを棒にすることになりうるからです。
小説同人誌を作るべきかどうかの分水嶺
即売会で完売させる自信のある作品だけが「小説同人誌」になれます。
もし半分でも売れ残るようであれば確実に赤字になりますから「小説同人誌」など作るべきではないのです。
なにをもって分水嶺とするか。
基本的には「ブックマーク」がたくさん付いている小説を基準にすると良いでしょう。
「これだけのブックマークがあって評価も高いのなら、出版社から商業ライトノベル化の話がくるかもしれない」ほどの好評を博している「オリジナルの連載小説」であれば「小説同人誌」にすべきではありません。
いずれ出版社から依頼がくるはずだからです。
「ブックマークも評価も低いけど、渾身の力作だから「小説同人誌」にしても買ってくれる人が必ずいるはず」と思うような連載小説も「小説同人誌」にすべきではありません。
「紙の書籍化」需要のない連載小説をわざわざ金を出して買うような物好きはまずいないのです。
「ブックマークも評価も低い」とわかっていながらする賭け。
こんなものはバクチでなくただの自爆です。
赤字がわかっているのに「小説同人誌」を作ったところで福沢諭吉先生(新紙幣は渋沢栄一先生ですね)が羽を生やして飛んでいくだけで、戻ってくることはありません。
「出版社からお呼びがかかりそうにないけど、それなりにブックマークされていて評価も高い」連載小説は「小説同人誌」向きだといえます。
ただし肝心の小説投稿サイトでは金銭が絡む宣伝は禁止されているはずです。「小説同人誌」は作ったけど宣伝する手段がないから読み手が即売会に来てくれそうにない。
そういう事態が起こりえます。
そのためには個人Webサイトや個人ブログを開設してあると役に立ちます。
個人Webサイトや個人ブログならいくらでも自分の作品を宣伝できるからです。
『小説家になろう』の場合は自分の「活動報告」で宣伝するぶんには了承されているようなので、規約をよく読んで「活動報告」で宣伝できそうならしてみましょう。連投は禁止されているようですが。
『Twitter』のユーザー名に「サークル配置番号」を付けてアピールする人もいます。これは小説投稿サイトでTwitterアカウントを明記してある場合はかなり有効な宣伝になりえるでしょう。
儲けを欲張らない
「小説同人誌」をオフセット印刷(一般書店で陳列されているような製本になる印刷)で刷ってもらう際、絶対に「儲けを欲張らない」ことです。
「小さな儲け」でよしとしてください。欲張って「百部売れたら何万円儲かるな」などと考えて百部を刷って即売会に臨んだけど十部も売れなかったなんてことがざらにあるのが同人誌即売会という場です。
「百部を欲張って大損した」ことになります。
「大きな損」より「小さな儲け」です。
絶対に「儲けを欲張らない」でください。
最後に
今回は「同人誌として販売する」ことについて述べました。
世界観がいくらでも思いつけて、一つの世界観に固執しないような書き手以外は「小説同人誌」を作るべきではありません。
また「オリジナルの連載小説」はいつか出版社からお声がかかるかもしれません。原則的に「小説同人誌」にしてしまった世界観は商業ライトノベルにはなれないと思っていいです。
世界観を作るのが面倒なら「現実世界」を舞台にした作品を描きましょう。
異世界ものは毎度毎度世界観を創り出すのに時間がかかってしまいます。
人気を集めるために『小説家になろう』で人気の「異世界転生」「異世界転移」ものを書こうと躍起になっていると、次作がすぐに思いつかなくなって次作の投稿間隔があいてしまうことも出てくるでしょう。
でも「プロ小説家」を目指す人は総じて「小説を書くことそれ自体が楽しいこと」だと思っています。息をするように小説を書くのです。
だから「異世界転生」「異世界転移」ものを書いた後はいったん「現実世界」を舞台にして連載し、その余力で次作の世界観を創り出していけばいい。
そうすれば切れ目なく連載もできて書いている人も楽しいし、読む人も連載が待ち遠しくなります。
「プロ小説家」を目指すなら読み手から求められるくらいの人気を集めておきたいものですね。
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