76.実践篇:会話文の種類
「会話文」の一言にはいくつかの種類があります。
その一端を見てみましょう。
会話文の種類
小説の文章は大きく「
とくにライトノベルは「会話文を主体として、地の文で状況の説明や描写や心の動きを動作として描写」していくのがセオリーです。
心の動きを会話文で行なうのは、一見簡単そうですがテクニックが必要になります。
そこで「地の文」で説明や描写や出来事を通して心の動きを見せるなどをし、「会話文」で人物の言葉を書き記すのです。
「会話文」はさらに「対話」「独白(独り言)」「心の声」「機械などでする遠隔話」「テレパシーなど心での遠隔対話」に分けられます。
それではまずライトノベルの肝である「会話文」の種類をひと通り見ていきましょう。
対話
これは実に明快です。話を聞かせる相手がいる会話文が「対話」になります。
――――――――――
「今日はこれから雨が降るそうだから、傘を持っていきなさい」
「わかったわ、母さん」
母の言葉を聞いた私は玄関で靴を履き終えると、傘立てからお気に入りの一本を取り出した。
――――――――――
文章上では主に「 」の形で表し、基本的に改行して一字下げせずに書きます。そしてその人の会話が終わればまた改行するのです。そのため「地の文」は行頭必ず一字下げして書きますが、「会話文」は一文字目が“「”になります。つまり一文字目を見れば「地の文」なのか「会話文」なのかがひと目でわかるのです。
また「会話文」の閉じカッコ“」”前の句点“。”は省略するのが現在の作法になります。また地の文では“!”“?”はその後一字空白を入れる必要がありますが、“」”前の空白は省いて“!」”や“?」”のように書くのも作法です。
独白(独り言)
「独白」は聞かせる相手がいないのに声に出してしまうことです。
聞かせる相手はいませんが、文章上では「 」を用います。
――――――――――
「今日はこれから雨が降る予報だから、傘持ってかなきゃ」
玄関で靴を履き終えると、傘立てからお気に入りの一本を取り出した。
――――――――――
相手がいなくても、声には出しているから「 」でいいのです。
心の声
「心の声」は心ではそう言っていたとしても言葉として音を出していない声を指します。
――――――――――
「今日はこれから雨が降るそうだから、傘を持っていきなさい」
(わかったわ、母さん)
母の言葉を聞いた私は玄関で靴を履き終えると、傘立てからお気に入りの一本を取り出した。
――――――――――
文章上では主に( )の形で表します。こちらも一字下げせずに書きます。つまり一文字目が“(”なら「心の声」です。
また声量を抑えた「ヒソヒソ話」を表すときも( )を用いることがあります。
機械などでする遠隔対話
基本的に対話者がどちらにいるかでカッコの付け方が異なります。母親側の声が電話のスピーカーから聞こえてくるなら、
――――――――――
〈今日はこれから雨が降るそうだから、傘を持っていきなさい〉
「わかったわ、母さん」
母からの電話を切った私は玄関で靴を履き終えると、傘立てからお気に入りの一本を取り出した。
――――――――――
のように書くことが多いです。こちらも「対話」「独白(独り言)」「心の声」と同様、行頭を一字下げせずに書きます。つまり一文字目が“〈”なら「機械などでする遠隔対話」です。
またテレビやラジオから声が聞こえてくる場合も〈 〉を用います。機械などから聞こえてくる声なので同じように表記するのです。
――――――――――
〈東京の今日の天気は曇りのち雨です。折り畳み傘を持っておくとよいでしょう〉
――――――――――
このように書きます。
テレパシーなど心での遠隔対話
こちらは基本的に心の声と変わりません。ただ心の声と区別するために〈〉を用いることが多いです。
――――――――――
「今日はこれから雨が降るそうだから、傘を持っていきなさい」
〈わかったわ、母さん〉
母にテレパシーで返した私は玄関で靴を履き終えると、傘立てからお気に入りの一本を取り出した。
――――――――――
「機械などでする遠隔対話」と同様〈 〉を用いるのでテレパシーと機械が区別できなくなってしまいます。その際はテレパシーのほうのカッコを変えることが多いのです。「心の声」同士の会話であると考えるなら、
――――――――――
(今日はこれから雨が降るそうだから、傘を持っていきなさい)
(わかったわ、母さん)
母とテレパシーで話した私は玄関で靴を履き終えると、傘立てからお気に入りの一本を取り出した。
――――――――――
のように( )を使う手もあります。ただしこの場合は「ヒソヒソ話」と混同しやすくなるため、テレパシーという手段を表すのが難しくなるのです。そこで数あるカッコのバリエーションの中からたとえば〔 〕を使う手なども考えられますね。
会話文の省略方法
以上が会話文の基本的な書き方になります。
ただし、短い言葉の場合は改行せず地の文に入れ込んでしまう方法もあります。上記の例なら
――――――――――
「今日はこれから雨が降るそうだから、傘を持っていきなさい」
私は玄関で靴を履き終えると「わかったわ、母さん」と言って傘立てからお気に入りの一本を取り出した。
――――――――――
とこのように書くのです。さらに「 」を外してしまうことも可能です。
――――――――――
「今日はこれから雨が降るそうだから、傘を持っていきなさい」
私は玄関で靴を履き終えると、わかったわ、母さん、と言って傘立てからお気に入りの一本を取り出した。
――――――――――
これでもじゅうぶん表現できます。このように短い対話なら地の文に入れ込んで行数を削る意識も持ってみてください。とくに字数制限のある短編やショートショートではいかにして文字数と行数を削れるかが勝負です。略せるものはどんどん略していきましょう。
口グセでキャラを分ける
会話文でとくに注意したいのが「誰が話しているのかわからなくなる」ことです。
とくにその場にいる人数が多ければ多いほど「わからなくなる」ものです。
会話文が主体のライトノベルでは顕著になります。
そういうときは「口グセ」を用いて話しているのが誰なのかを瞬時に判断させる手法を用いるのです。
――――――――――
「いえいえ、私では判断できかねますのよ」
「そうだよ。いきなり押しかけてきて製品を買ってくれなんてよく言えるな」
「そう言われましても、私もこの製品を売らないことには上司から怒られますので」
「いえいえ、それはそちらの都合でありまして、私どもには関係のない話ですわよね」
「うちには私の稼ぎを待っている女房子どももおりますので、そこをなんとか」
「なんとかと言われましても、こちらも慈善事業をするわけには参りませんことよ」
「いくらここで時間を食っても俺たちはいっさい買わないからな。さっさと切り上げて別の家に売り込みにいきゃいいだろ」
――――――――――
この例の場合、その場に三人いるのですが、誰が言っているのかは一目でわかりますよね。立場の違いもありますが「口グセ」も手がかりになったはずです。
「いえいえ」で始まる人は上品な物言いをして語尾に「よ」が付くものが多い。
「そうだよ。」で始まる人は粗野な物言いをして語尾に「な」がよく付きます。
「そう言われましても」の人も丁寧な物言いですが、同情を買おうとやや卑屈な印象を受けますよね。
これが「口グセ」を利用したキャラ分けです。
「こういう物言いをしている」人が重複しなければ「物言い」という「口グセ」だけでキャラは区別できます。
最後に
会話文はそのやりとり自体だけを取り出しても自然な流れになっていなければなりません。
話し相手が当たり前に知っている情報を取り立てて書くようではいちいち説明くさくなります。
それでは地の文となんら変わりありません。
新聞や雑誌、テレビやメールやSNSなどメディア・媒体で設定を読ませると地の文での説明が楽になります。
その場合は〈 〉を用いて書けばいいでしょう。
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