52.中級篇:逆ノベライズで表現力を鍛える
「逆ノベライズ」は私の造語です。
まぁ字面を見ればどのようなものかは想像がつくと思いますけど。
逆ノベライズで表現力を鍛える
連載しているライトノベルの売上がよくなるとアニメ化・マンガ化などのメディアミックスの話が来ます。
売れないライトノベルには声すらかかりません。
商業的にいってごく当たり前な話です。
売れていないのにアニメ化したところで視聴者がBlu−rayやDVDを買ってくれるでしょうか。
よほどアニメの出来がよい場合以外まず買いませんよね。
そうなると「売れているライトノベル」を研究するのが上達へのひとつの方法です。
どこが・なにが読み手を惹きつけて売れているのか。
時代を読む意味でもこれはとても有意義だと思います。
原典小説を模倣する
「売れているライトノベル」を研究していけば、どこが・なにが読み手を惹きつけているのか見えてきます。
そして自分でこの原典を書いているつもりで原稿用紙やMicrosoft『Word』、JUST SYSTEM『一太郎』、Apple『Pages』各OS付属の『テキストエディタ』などに書き写していくのです。
そうすれば原著者の文体を吸収して模倣することもできますし、読み手にウケそうな展開も見えてきます。
しかし「分量が多くてとてもそんなことをやっている時間はない」。
そうお思いになる方が多いと思います。
そこで私は「逆ノベライズ」を提案するのです。
逆ノベライズ
私が提案する「逆ノベライズ」は日本語にすると「逆小説化」となります。
そう書かれてもなんのことだかわからないでしょう。
それも当然、私の造語だからです。
簡単にいうと「いったんアニメ化されたものを観て、もう一度小説にしていく」ことを指します。
それなら「原典小説を模倣したほうが速いんじゃないの」と思われるかもしれません。
確かに「原典小説を模倣」したほうが文体の習得という意味では速いのです。
でも表現力の向上に限って言えば「いったんアニメ化されたものを観て、もう一度小説に落とし込んでいく」ほうが断然速まります。
より効果が高いのは「マンガを小説に変換する」ことです。こちらはコラムNo.120「応用篇:マンガ的小説への挑戦」で述べています。
逆ノベライズの効用
本来書き手が頭の中で情景を思い浮かべてそれを文章にして綴っていくのが、小説の書き方になります。
「逆ノベライズ」のいいところは「思い浮かべる状況」がすでに映像化されているところです。
つまり思い浮かべるのではなく、目で見て耳で聞いたものをそのまま文章にしていける。
書ける要素がありすぎるくらい見せて聞かせてくれます。
『pixiv小説』では二次創作がランキングを独占していますが、現在「男子に人気」ではライトノベルの渡航氏『やはり俺の青春ラブコメはまちがっている。』が上位を独占しているのです。
男子は生真面目なのか紙の書籍を丹念に研究している様子が伺えます。
これに対し「女子に人気」で上位を独占しているのはアニメの久保ミツロウ氏・山本沙代氏原案『ユーリ!!! on ICE』です。他の上位作品もPCブラウザゲーム『刀剣乱舞』やスマートフォンアプリゲーム『Fate/Grand Order』、マンガとアニメの青山剛昌氏『名探偵コナン』といった公式ではほとんど小説化されていないものが上位に並んでいます。
つまり女子は映像や絵を観ながら小説を書いていることがわかるのです。
そしてデイリーランキングでは「女子に人気」の二次創作が上位を占めています。
このことからわかるのは「女性は二次創作小説をよく読む」ことと「映像と音声を観聴きしながら小説化していく」ほうが人気が出やすいということです。
「男子に人気」でトップ人気の『やはり俺の青春ラブコメはまちがっている。』もすでにアニメ化されています。つまり原典を読まないでも小説化できるのです。
文体を模倣するつもりがないのなら「アニメを観ながら、小説にしていく」というやり方が最も人気が出るということになります。
これが「逆ノベライズ」の最も優れている点です。
(以上は『ピクシブ文芸』掲載時の情報であり、2019年5月時点ではランキングに相違があります)。
逆ノベライズの方法
本コラムNo.46「箱書きを書く」で箱書きを作ることを説きました。
逆ノベライズでは必ず「箱書き」を書いてください。
いつ、どこで、どのキャラたちが、何を言って、どう動いて、起きた・起こった
まずこれをおおまかに整理することでそのシーンの概要が知れます。
「箱書き」を書いたら、もう一度アニメを観て「そのシーンに存在する物は何か」「キャラがどういう行動をとっているか」「どういう会話をしているか」に注意してすべて文章化していきましょう。
するとかなり長ったらしい文章が出来あがります。
これが「小説の素」です。
オリジナル小説を書く人にはわかると思いますが「小説の素」こそ書き手の頭の中でイメージ化されている情景そのものになります。
あとはこの膨大な情報を研ぎ澄ましていくのです。
小説の素を研ぎ澄ます
「小説の素」ができたら、それを最低限必要な部分を除いてすべて削ってしまいましょう。
たとえば部屋に存在していた物のうち、物語に関係ないものはすべて削ります。
ただ、その部屋を象徴するような物だけは残しておくべきです。
そうしないと「何もない部屋」になってしまいます。
会話も「ああ」とか「そうか」とかのように一言しか言っていないようであれば、地の文で「八幡はああと答えて〜した。」のように短縮していくのです。
これでかなりの会話文が削れます。
このようにして「小説の素」を削りまくって研ぎ澄ませていくのです。
逆ノベライズに慣れてきたら
「逆ノベライズ」に慣れてきたら「小説の素」それ自体をシェイプアップしていきましょう。
そのシーンに出てくるものは、「物語に関係する」ものと「場所を特定する」ためのものだけを書いていくのです。
すべてのキャラの動作を書いてありましたが、こちらも「物語に関係する」動作と「そのキャラを特徴づける」動作に絞って書いていきます。
これだけでかなり手早く必要な情報を手に入れられるのです。
そしてこのシェイプアップによって書き手はオリジナル小説を書く際に必要となる表現力を手に入れられます。
「物語に関係する」もの「場所を特定する」もの「そのキャラを特徴づける」ものを必ず書くという基本中の基本が身につくのです。
最後に
「逆ノベライズ」した小説は絶対に小説投稿サイトに投稿しないでください。
投稿してしまうとそれは「盗用」とみなされます。
「逆ノベライズ」はあくまでも「表現力を鍛える」ためにする「作業」です。
「創作」ではありません。
「逆ノベライズ」で身につけた表現力を使って書いた二次創作を『pixiv小説』投稿してもよいですし、オリジナル小説を書いて『小説家になろう』『エブリスタ』『アルファポリス』『カクヨム』などに投稿するのもよいでしょう。
少なくとも現状『pixiv小説』『ピクシブ文芸』はオリジナル小説への反響はほとんどありません。オリジナル小説で勝負したいなら他の小説投稿サイトをオススメします。
まあ私も『ピクシブ文芸』にこのコラムを掲載していますから『ピクシブ文芸』の将来性を見据えたいとは思っているのです。でも現状公式の動きがあまりにも遅すぎてオリジナル小説を投稿したいと思えなくなっています。もう少したとえば公式記事を毎日連載するくらいの努力はしてほしいものですが。
最後は『pixiv』様への批判めいてしまいましたが、できれば『pixiv』で完結できるようなエコシステムを作ってほしいと思っています。せっかく絵の投稿が主体のWebサイトなのですから、オリジナル小説の表紙や挿絵を描いてくれる人の募集をする機能を付けるだけでも食いつきは違ってきそうなんですよね。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます