中級篇〜少しわかってきたら、ちょっと意識してみましょう
43.中級篇:テーマについて
今回から中級の書き手を対象としたコラムとなります。
まずは「テーマ」についてです。
初級のときは「テーマなんて決めなくていい」としましたが、中級になればそうも言っていられません。
テーマについて
コラムNo.12「テーマについて」において「テーマはにじみ出るものだからとくに意識せず、あまり固執しなくてよい」旨を書きました。
初心者の書き手が「テーマ」を意識してしまうと、「あらすじ」の段階からすでに迷いが生じ、満足に「あらすじ」が書けなくなるからです。
だから初心者の書き手はテーマに固執することを避けなければなりません。
テーマを考えず「主人公はどうなりたい」から「主人公がどうなった」までを描くことだけを意識すると、「あらすじ」はすらすらと書けるようになります。
しかし中級以上の書き手を目指すなら、「テーマ」から逃れるわけにはいきません。
テーマとは
小説は「主人公がどうなった」かを書くものであることはたびたび書いてきました。
それとは切り口の違う「主人公の持つこういう一面を表現したい」というものが書き手にはあるはず。
それこそが「テーマ」なのです。
人間の内面を描く、それが小説の醍醐味とも言えます。
たとえば恋愛もので主人公の持つ「気遣いや優しさ」を表現したい。
戦争ものの「大量殺戮による命の重さ」から、バトルものの「身近な人の死を悼む心」など、表現したいレベルはさまざまです。
どのレベルを選ぶかで書くべき内容は変わってきますが、その変わってくるようにさせるものが「テーマ」なのです。
ここまで読んで「テーマ」というものが漠然と見えてきたと思います。
「主人公の持つこういう一面を表現したい」という書き手の動機を描くことで、読み手は「テーマ」を感じていくのです。
「テーマ」を感じさせない小説には深みがありません。
そのためにも「主人公の持つこういう一面を表現したい」という思いを持ち続けることが書き手には求められます。
二次創作とオリジナル作品
二次創作の場合、書き手は原典やアニメなどですでに「主人公の内面」をあらかた知っているはずです。そして読み手も同様に「主人公の内面」がどういうものかを知っています。
だから殊更「テーマ」なんて掲げなくても読み手は読んでくれるのです。
でもオリジナルではこうはいきません。
「主人公の内面」をすべて知っているのは書き手だけです。
それを読み手にわかってもらうには「主人公の持つこういう一面を表現する」ことを積み重ねていく必要があります。
単に説明文で「彼は母親のことを悪く言う人間を許しておけない性分だ」と書いても読み手の共感は得られません。
その一行の説明文を「
二次創作を多く書く人はそのことをついなおざりにしてしまいます。
あえて「
それではダメなのです。
二次創作においてもその人物の内面を描こうと思えば「
素っ気ない説明の一文ではなく、一回の投稿ぶんで「主人公の持つ一面」を表現していくようにしてください。
読み手の食いつきが違ってきますよ。
「テーマ」を書き表すために小説は長い文章を綴ります。
どんな
「主人公がどうなりたい(起)、
そのなかで「
つまりこの
中級の書き手にはそれが求められます。
主人公の持つ一面を表現できない小説は読み応えがないのです。
主人公の対処の仕方でその主人公の持つ一面が現れてきます。
その積み上げで主人公の内面をすべて描ききることができれば、初めてその小説で主人公が生きてきます。
一巻完結の場合は描ける内面は少ないのですが、超長編の連載小説ともなれば、主人公の内面をすべて描ききって終了すべきです。
とくに長期にわたる連載ならば、連載を経るごとに主人公は外面的にも内面的にも成長していきます。
その成長して変化した内面を描くことが必須です。
ギャグものは内面が成長しない
内面が成長しない小説というのは「ギャグもの」くらいしかありません。
「ギャグもの」は主人公がどんな状況に陥ろうとも、とんでもないことが起きて解決してしまう。
そして主人公はまったく反省もしないし成長もしません。
その積み重ねが「ギャグ小説」なので、主人公が内面的に成長しないほうが都合がいいのです。
これは二次創作にも言えます。
二次創作は大半が「ギャグもの」になっています。
これは原典から二次創作するうえで、原典が言及していない内面を取り上げることが難しいからです。
だから内面を描かず短時間で終わる「ドタバタ劇」な作品が二次創作には多く見られます。
意欲的な書き手は二次創作でも「主人公の内面」の成長を描こうとするものです。
原典での内面の変遷をうまく取り入れて、二次創作でそれを活かしていきます。
これは原典を極めて深いところまで読み込んでいるからできるのです。
だから原典を{
テーマ不在にならないためには
初心者の書く小説では「いっこうに話の筋が見えない」ものが多く見受けられます。
それは多分に「テーマ不在」と関連するのです。
「テーマ」があればシーンや物語の展開が定まります。だから「話の筋が見えてくる」ものなのです。
「テーマ」がまったくないとシーンや物語の展開が唐突になるきらいがあります。
初心者でも「主人公がどうなりたい」という動機と「主人公がどうなった」の
だから主人公の動機と
テーマと関連する文章を書く
すべての表現は「テーマ」である「主人公の持つこういう一面を表現したい」に通じていなければなりません。
極端な話、「テーマ」とつながらない文章は不要です。
「テーマ」とつながる文章とは、「テーマ」に沿った表現と、「テーマ」とは逆向きの表現との対比を指します。
命の尊さを語りたいのなら、人の死を強く見つめなければなりません。
死を前提としない命には重さがないのです。
そのうえでなお懸命に生きようとする姿勢を書く。
ガン患者の手記がベストセラーになるのは「死に瀕してなお命が輝いている」からです。そこには緊迫感があります。
文章に深みを与えるためには、一方向からだけでなく、多方面からも光を当てなければなりません。
それができている文章には、間違いなく「テーマ」があります。
小説投稿サイトにおけるテーマの意義
小説投稿サイトへ掲載する作品にも「テーマ」がなくてはいけません。
なぜなら「テーマ」を「あらすじ」「キャプション」に書かなければ、読み手はそれがどんな小説なのかを知る術がないからです。
小説投稿サイトではシリーズ名とタイトル名と著者名とともに「あらすじ」「紹介文」「キャプション」が表示されます。
検索画面で表示される字数は各サイトでまちまちです。その限られた「紹介文」の中で、自分の小説に書かれている「テーマ」を語ってください。
読み手はその「あらすじ」「紹介文」「キャプション」に書かれてあるテーマによって読みたい小説を探して読み始めます。
「あらすじ」「紹介文」「キャプション」に「テーマ」が書かれていないと、どんな小説なのか読み手が判断できないのでまず読まれなくなるでしょう。
読まれる小説は必ず「あらすじ」「キャプション」でその小説の「テーマ」が書かれているのです。
『小説家になろう』や『カクヨム』のランキングを見てもわかると思いますが「この小説にはこんなことが書かれていますよ」という具合に「テーマ」がきちんと書かれていますよね。
書いてあるからランキングに載るのです。
書かれていないのにランキングに載るのは連載している小説とそれを書いた書き手の新作に限られます。
読み手はシリーズ名やタイトル名や著者名で読みたい小説を選んでいるのではありません。
「キーワード」「タグ」で検索して一覧に出てくる作品の「あらすじ」「紹介文」「キャプション」を読み、自分の読みたいもの面白そうなものなら読む。
ただそれだけです。
最後に
今回は「テーマ」について述べました。
基礎篇では「テーマなんて考えなくていい」と言いましたが、中級になれば「テーマ」を決めて書かなければなりません。
それだけで
意味のない物語を読んで楽しめる人は稀です。
どうせ書くなら読み手が満足するような小説を書きたいですよね。
それならまず「テーマ」を明確にしましょう。
連載小説なら一貫した「テーマ」があれば断然面白くなります。
こうした細かいことを積み上げていくことで、初心者から中級へとステップアップできるのです。
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