40. :あらすじに迷ったら起承転結に

 あらすじに迷ったらとりあえず起承転結にしてみるといい、ということを『シンデレラ』を通して見ていきます。





あらすじに迷ったら起承転結に


 舞台背景と人物の設定が済んだら、いよいよあらすじを書きましょう。

 箇条書きでかまいません。物語の流れに登場人物を配していきます。

 ここで迷うようなら「起承転結」を用いましょう。


 「起承転結」は中国の四行詩で用いられる流れを指します。

 これが物語に応用できるので多くの「文章読本」で「起承転結」が推奨されているのです。

 他に「序破急」やハリウッド脚本術の「三幕法」というものもありますが、今回は「起承転結」について書き及びます。





あらすじの骨子となる起承転結

 あらすじの骨子は、構成で決めた「主人公がどうなりたい(起)、出来事イベントが起こって(承)、どう対処して(転)、主人公がどうなった(結)」の四部構成です。

 『シンデレラ』の場合、

 「起」シンデレラが嫌がらせされたくない

 「承」魔女の助けで淑女になって

 「転」舞踏会で王子様と知り合って

 「結」王子様と結婚する

 という骨子があり、これに肉付けをしていきます。

(本当はもう少し続きがあるらしいのですが、多くの人はここまでの話だと思っているのであえてここまでにしておきます)。





「起」の構成

 「起」の部分では、主人公の登場と「どうなりたい」のかそして舞台背景を書きます。

 主人公の境遇を描くために脇役を配してもかまいません。


 「対になる存在」もここで出せるようなら出してください。

 もし出せないのであれば、話だけでもいいので話題として触れておくとよいでしょう。


 『シンデレラ』の場合は、継母と義姉妹を登場させることでシンデレラの境遇を示しつつ、彼女たちの会話から「対になる存在」の王子様の情報を読者に与えています。

「起」シンデレラが嫌がらせされたくない

  ・シンデレラ登場

  ・継母と義姉妹の嫌がらせ

  ・彼女たちの会話から「対になる存在」の王子様が舞踏会に来ることを知る(「承」への伏線)

  ・継母と義姉妹が舞踏会に出かけて、シンデレラが留守番する





「承」の構成

 「承」の部分では、「転」の状況となるため、主人公に何か出来事イベントが起こることを書きます。脇役の手助けを受けたり邪魔が入ったり。

 『シンデレラ』の場合は、協力者の魔女が登場してシンデレラを淑女に変身させる流れと、「0時になると魔法が解ける」という伏線を張っています。

「承」魔女の助けで淑女になって

  ・魔女登場

  ・魔女の魔法で馬車が現れ、華やかなドレス姿にガラスの靴の出で立ちに

  ・「0時になると魔法が解ける」ことを知る(「転」への伏線)

  ・シンデレラが舞踏会に向かう





「転」の構成

 「転」の部分では、主人公と「対になる存在」のやりとりを中心に描き「主人公がどう対処したか」を書きます。

 『シンデレラ』の場合は、王子様とダンスを踊って「いい雰囲気」になる流れと、0時の鐘が鳴って急いで城を出るときに「ガラスの靴が脱げる」という伏線を張ります。

「転」舞踏会で王子様と知り合って

  ・舞踏会で王子様登場

  ・王子様と踊って心を通わせる

  ・0時を告げる鐘が鳴る(「承」での伏線を果たす)

  ・急いで城を出る途中でガラスの靴が脱げる(「結」への伏線)





「結」の構成

 「結」の部分では、最終的に「主人公がどうなった」かを中心に書きます。

 他の部分で張った伏線のうち今まで果たされていないものがあれば、ここですべて果たされなければなりません。

 『シンデレラ』の場合、王子様はガラスの靴がぴったり合う女性を探し始め、シンデレラがそれを履いたことで彼女と再会し、結婚することになるわけです。

「結」王子様と結婚する

  ・王子様がシンデレラを忘れられない

  ・ガラスの靴が合う女性を探し始める

  ・シンデレラが靴を履いてぴったりと合う(「転」での伏線を果たす)

  ・王子様と結婚する





四部構成の中にさらなる四部構成がある

 上の例を見ればわかると思いますが、「起承転結」のそれぞれの部分がさらに四部構成になっているのがわかると思います。

 物語の基本は四部構成なのです。


 『シンデレラ』は「なんで俺が」形式つまり「自分がどうなりたい――出来事イベントが起きる――主人公が対処する――主人公がどうなった」の流れで通しています。


 逆に「俺が俺が」形式つまり「自分がどうなりたい――主人公が心のままに行動する――出来事イベントを巻き起こす――主人公がどうなった」の流れとなる四部構成もあります。

 アニメのビッグウエスト『マクロス7』の主人公である熱気バサラの「戦争なんてくだらないぜ、俺の歌を聴けぇ!!」というロックな立ち振る舞いが代表例です。


 ひとつの物語で一つの形式だけがとられることは稀です。

 たいていの物語は「俺が俺が」と「なんで俺が」の組み合わせで出来ています。

 一方的な展開ではわかりやすすぎるのです。

 組み合わせることで物語に多様な面が生じて奥深くなっていきます。





最後に

 「あらすじ」はこのように決めていけばいいでしょう。

 「あらすじ」を書かずに本編を書き出す人もいます。考えてから書く人と書きながら考える人がいるからです。

 とくに連載小説を書く人は「あらすじ」を書かずに行き当たりばったりという方が多いように見受けられます。


 ですが「小説賞・新人賞」を目指したり連載して小説を生業としたいのであれば、きちんと「あらすじ」を書いておいたほうがよいでしょう。

 物語がすっきりするので、無駄のない説得力を持つ文章に仕上がります。


 また「小説賞・新人賞」では審査に際して梗概こうがいを求められる場合もあります。最初から「あらすじ」に従って書いていれば、その「あらすじ」を文章にまとめなおすだけで梗概こうがいが完成するのです。


 物語の設計図としても、梗概こうがいを簡単に作るためにも、物語を作る際には必ず「あらすじ」を作っておきましょう。



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