36. :人物の書き方
ここから少しずつ実践的な内容に入っていきます。
あくまでも少しずつ、無理のないペースで進めていきます。
小説は「主人公がどうなりたい」から始まって「主人公がどうなった」で終わります。この変遷が小説の
読み手は主人公に感情移入してその過程を「疑似体験」します。
だから読み手は小説を読むのです。
ここまで何度も繰り返して書いてきたことになりますね。
もう「耳にタコができる」ほどだと思いますが、とても重要なことなので何度でも繰り返して念を押しているのです。
作用を通じて「主人公がどうなりたい」が妨害を受けたり援助を受けたりするのです。
そして主人公には「対になる存在」が必要です。
ラスボスであったりライバルであったり意中の異性だったりします。
さらに脇を固めるキャラも必要ですね。
主人公の周りにいる者、「対になる存在」の周りにいる者、どちらにも属さない者もいます。立場は様々です。
こういった登場人物をどのように小説で書けばいいのか。今回は「
エピソードが改まったら必ず説明する
あらすじを作ったときに、
平均的な部分は言及せず、特徴が際立つ部分のみを設定したはずです。それを余すところなく書き込んでいきましょう。
他の人と同じ部分をいくら書き紡いだところで、そのキャラの個性は浮き立ちません。同じ部分は特段書き及ぶ必要がないのです。
もちろん恐怖で顔が青褪めたというのなら通常ではありませんから書く必要があります。
でも平素は他の人と同様白い肌をしているのであれば、殊更「白い肌」を書くのは冗長になるだけです。
とくにエピソードが改まり、新たに書き出したときは必ず特徴を書いていきましょう。
多くの読み手はエピソードをひとつ読み終わるとひと区切りつけていったん読むのを中断します。
それから人によっては数日から数週間にわたり続きを読まないことがざらなのです。
そのような読み手のためにも、エピソードが改まったら人物の特徴を再びしっかりと書いていきましょう。
「小説の冒頭で書いてあるから読み手も憶えているだろう」と思うのは書き手の独りよがりです。
あなたがよほどの書き手で「私の小説は冒頭から結末まで一気に読んで当たり前」と思うような人物だったら、書き手本人がそれでよいと思っているのならそれでもよいでしょう。
しかしそんな書き手の作品はまず読まれなくなります。
第一、小説は書き手が書きたいように書いたものが読み手にウケるわけではないのです。
読み手がいつどこから読んでも話についてきてくれる。そんな文章でなければ、読み手が置いてけぼりにされてしまいます。
そもそも「一気に読めてしまう」ことは「内容がスカスカ」との
読み手が一気読みできるだけの時間を用意してあること自体、稀です。
小説というのはたいてい「
だから、読み手がいったん読書から離れるエピソードの終わりを意識し、エピソードが改まったら新たな小説を書くつもりで人物の特徴を書いていくようにしてください。
ひとつの投稿ぶんで説明する
また読み手によってはエピソード内の
そのためできれば事あるごとに
そうすれば読み手に繰り返し繰り返し同じ情報(特徴)を伝えていくことになり、読み手はキャラのイメージを固めやすくなります。
いわゆる「刷り込み」です。
これが小説投稿サイトでの連載になると、さらにもれなく
文字の分量は毎日連載なら一回で千五百〜六千字、週間連載なら一回で七千〜一万五千字程度が多いでしょう。つまり原稿用紙換算で毎日連載は十枚、毎週連載で二十五枚前後となります。
毎日連載は一
つまり連載するなら毎回人物の特徴を書く必要があります。
とくに小説投稿サイトに掲載したら、読み手はどの
どこから読んでもしっかりと人物をイメージできる。連載するならこれが当たり前。
「前回投稿ぶんが未読なら、それを読んでから今回ぶんを読んでください」をやってはダメなのです。完全に読み手が頭から抜けています。
読み手がどこから読み始めても「お、この話は面白いな。前回までの投稿ぶんも読んでみるか」と自発的に思ってもらえるようになるには、その
この連載が好評を博し「紙の書籍化」が決まったら、余分な説明は省いていくことになります。
ただこれはあくまでも「紙の書籍化」が決まったら「推敲して削る」ということであり、連載中に意識すべきことではありません。
内面を描く
そのキャラは楽観的なのか悲観的なのか。積極的なのか消極的なのか。心のこの部分を突かれると激しく動揺して侮蔑の言葉を口走るのか。どんなことを言われても馬耳東風とばかり涼やかな態度をとるのか。
それもまたキャラの特徴だといえます。
これは「ツンデレ」や「ヤンデレ」などでは顕著ですよね。「○○萌え」なども同様になります。またライトノベルでは最近「サイコパス」なキャラがよく登場していますよね。そういった流行りもしっかりと押さえて
ラブコメで双方が片想いをしているという認識だけでは話が広がりにくいし、舞台となる世界もかなり狭いのです。
でも他のキャラが特異な性格を持っていれば、小説内世界は多様性を帯びてきます。
ただの片想い同士による話よりも破天荒な人物が二人の仲を引っ掻きまわす。
これだけで物語はぐんと面白くなりそうです。
動作は逐一書き記す
人物が動作したら必ず記載してください。
人は長時間動かずにじっとしていることはまずありません。
じっとしているのは禅を組んでいるか祈りを捧げているか儀式を行なっているか何かに集中しているかくらいです。
話をしながらでも必ず何か動作をしています。
そして「人物の動作を書く」というのは語彙力も鍛えてくれます。
日本語の語彙の多くは人物の動作に関する言葉です。
「類語辞典」を手元に置き、できるだけ多様な語彙で書き分けてみてください。その繰り返しで語彙がどんどん身につきます。
的確な語彙を選べるようにもなるでしょう。
だからといってすべての動作を書き込んでいったら、それだけで膨大な分量になってしまいますよね。
そこに不安を感じる書き手もいるのです。でもかまいません。後で削りますから。
今はコンピュータで執筆する時代です。紙の原稿用紙とは異なりいくらでも書いて削れます。
初心者の書き手は書き足りないことはあっても書きすぎることはまずありません。だからまず書けるだけ書いてみるのです。
応募要項で十万字の指定があったら四割増の十四万字ほど書いてしまうくらいに書き込んでください。
これは人物の動作のみならず風景描写や感情描写なども同様です。とにかくたくさん書くこと。書いた後で大胆に削っていきます。
「文章を削る」作業は直近ではコラムNo.41「書きあげて推敲して発表するのが小説」、コラムNo.70「中級篇:推敲する」に記してあります。
最後に
今回は「
読み手はいつどのタイミングであなたの小説に触れるかわかりません。
連載で勝負するなら、そういうご新規さんたちをフォローしていくことが、多くの読み手をフォロワーに変えていくことにつながります。
そのために人物の説明が過剰になってもいいのです。
もし「紙の書籍化」されるとなった場合に推敲して削っていけば事足ります。
そのくらいの柔軟性を持っている書き手の書く小説は、とても魅力的です。
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