30. :物語を止めない(後略あり)

【注意】

 今回は「最後に」において『pixiv』特有の事柄に言及していたため、そこを省略致しました。

――――――――

 読み手は本筋の時間軸をなるべく滞りなく読みたいと願っています。

 しかし書き手のせいで物語が止まってしまうこともあるのです。





物語を止めない


 小説は物語です。

 主人公が出来事に立ち向かっていく姿を読むことで、読み手は「疑似体験」して経験知を高めます。

 主人公の成長イコール読み手の成長なのです。


 そんな小説ですが、あるときふと物語が止まってしまうことがあります。

 「物語が止まった」とき、読み手はどう反応するでしょうか。





物語が止まるとは

 小説を読み進めていて、突然「物語が止まった」と感じる瞬間を覚えるときがあります。

 そう感じたとき読み手は小説内世界から一気に現実世界に引き戻されるのです。

 これまでどれだけ深く没入していたかは問題ではありません。


 では「物語が止まる」原因はなんでしょうか。


 多くは「本筋に影響しない出来事イベントの挿入」「過去の出来事イベントを長期間挿入」と「設定の破綻(矛盾)」です。





本筋に影響しない出来事イベントや過去の出来事イベント

 「本筋に影響しない出来事イベントの挿入」「過去の出来事イベントを長期間挿入」をされると今続いている本筋の時間軸が文字通り止まります。


 止まっている間は、いくら「本筋に影響しない出来事イベント」「過去の出来事イベント」の作りがよくても読み手はれるでしょう。


 「早く続きが読みたいのにいつまでよその話をしているの?」とキレる読み手も出てきます。


 だから「本筋に影響しない出来事イベント」「過去の出来事イベント」は必要になった箇所に少しずつ入れていって、決して本筋が滞らないつまり「物語が止まらない」ように気を配ってください。





『ONE PIECE』『名探偵コナン』は牽引役ではなくなった

 たとえばマンガ・尾田栄一郎氏『ONE PIECE』やマンガ・青山剛昌氏『名探偵コナン』はともにかなり注意を払って連載されているマンガです。

 でも多くの読み手が「着地点の見出だせない連載」と感じて連載されている『週刊少年ジャンプ』『週刊少年サンデー』から離れていきました。

 そして「完結したらマンガ喫茶でまとめて読めばよい」と思ってしまうのです。


 それでもまだそれなりに魅力を感じている読み手であれば「単行本が出たら買って読めばいい」と思って単行本だけは買ってくれるでしょう。


 そうです。

 かつて『週刊少年ジャンプ』『週刊少年サンデー』を牽引していた『ONE PIECE』『名探偵コナン』は、単行本こそ売れますが連載誌の購買意欲を掻き立てる存在としては魅力が低下してしまったのです。

 書き手が本筋を進めず「着地点の見出だせない連載」にしてしまうことがいかに危ういことかはこの例を見てもわかります。





設定の破綻(矛盾)

 出来事イベントが起こると、主人公は対処に追われます。

 しかしうっかり高所恐怖症の人物を高層ビルや東京スカイツリーやエベレストに登らせてしまうとどうなるでしょうか。


 読み手はこのシーンにたどり着いた途端、「あれ?このキャラって高所恐怖症だったよね?」となり思考が止まります。

 思考が止まっている間は「物語も止まって」しまうのです。

 そして一気に小説内世界から現実世界に呼び戻されてしまいます。


 そして「私はこのキャラが高所恐怖症を克服した場面シーンを読み飛ばしてしまったのだろうか」それとも「このキャラが高所恐怖症に耐えている描写を読み飛ばしてしまったのだろうか」と思うのです。


 それまでがとても魅力的な小説であったのなら、もう一度冒頭から読み直してくれるかもしれません。

 丁寧に読み返した結果読み飛ばしもなく同じ場面にたどり着いたとしたら。

 それまでがどんなに魅力的であっても、その小説は先を読まれなくなります。


 これほど「設定の前フリ」はひじょうに強い影響力を持っています。

 「設定の前フリ」さえしてあれば主人公が窮地で超能力や魔法を使っても読み手は納得して読み進めるのです。





最新話を修正すると

 小説投稿サイトに投稿される小説は一回の投稿ぶんで三千〜五千字程度のことが多いです。

 たとえば好評を博して何十話と連載を続けてきたとします。

 そしてある一話で「設定の破綻」が発生してしまったとしたら、その瞬間読み手から猛烈な抗議のコメントが寄せられることでしょう。

 「このキャラはこんなことはしないしできないはずでしょ?」というような。


 すでに投稿された最新話は修正を余儀なくされます。

 もちろんそこで修正してしまったら、それ以降の物語の展開も変更せざるをえなくなります。

 つまり連載前に想定していた物語の展開を変更しなければならないのです。

 よって当初想定していた「主人公の結末ゴール」にたどり着けるかどうか怪しくなります。


 しかし投稿は定期的に続けざるをえません。そうしなければ読み手が離れていってしまうからです。

 このような状態になってしまうと書き手が「主人公の結末ゴール」まできちんとたどり着けるようにあらすじを改めるまで、連載は無軌道な惰性で続いていくだけになります。

 場合によっては「主人公の結末ゴール」そのものを変更しなければならないでしょう。


 書き手にとっては「着地点の見出だせない連載」になりますし、読み手にとっては「本筋がよくわからない連載」になってしまいます。

 この惰性が長く続くと読み手は散り散りになっていくのです。

 「物語が止まった」小説ほど退屈なものはありませんからね。





過去話を修正すると

 仮に今まで連載してきた過去話のほうを修正して「設定の破綻」を回避しようとしたらどうなるでしょうか。

 この連載を初めて読もうという方には「設定の破綻」が無くなりますから素直に物語を楽しめます。

 しかし今まで連載を楽しみにして付き合ってくださった読み手は置いてけぼりです。


 書き手としてはとりあえず「設定が誤っていたので○○話を修正しました。そこを読み直してください」のような文章を添えて最新話を投稿することになりますよね。

 それで既存の読み手が○○話を再度読み直して「物語が止まった」原因である「設定の破綻」は修正されました、とはならないのです。


 多くの読み手は連載を振り返って読み直すことなどしません。それをし始めたらそこから最新話に至るまですべてを読み直さなければならなくなるからです。そうしなければ正しい筋で物語を楽しめません。


 結果的に読み手はこの連載を放り出します。

 いつまた「設定の破綻」が発生するかわからないからです。

 そんな気持ちを抱きながら小説を読み進められるほど寛容な読み手はまずいません。

 だから「設定の破綻」が生じて「物語が止まった」小説からは読み手が離れていってしまうのです。





気を緩めない

 ゆえに書き手は連載をしている間、絶えず「設定の破綻」が発生していないか検証しながら執筆していかなければなりません。

 わずかな気の緩みで、これまでの読み手の期待を一気に踏みにじってしまいます。

 「小説を連載する」ということはそれだけの「義務が生じる」ものだと肝に銘じてください。


 読み手が「これまで連載を読んできたのは時間のムダだった」と感じたら、もうその読み手は同じ書き手の小説を読もうとはしなくなります。

 現在だけの問題ではなく、「紙の書籍化」をしたときに書籍を買ってくれるフォロワーを失ってしまうのです。


 これが重大な損失であると認識し「気を緩めず」に連載を続けましょう。


 「設定の破綻」がない小説でも物語の展開が変であればフォロワーは増えませんが、いずれ小説投稿サイトでランキングに載るようになればフォロワーは確実に増えます。

 しかしどんなに展開が見事な小説でも、たった一度「設定の破綻」をしたらフォロワーが激減するのです。

 せっかく時間を割いて書いた小説が誰にも受け入れられなくなる。

 これだけは避けなくてはなりません。





最後に

 今回は「物語を止めない」ことについて述べました。

 本筋を滞らせないよう「本筋に影響しない出来事イベントの挿入」「過去話を長期間挿入」しないことと「設定の破綻(矛盾)」を出さないこと。

 この三つを意識して連載を続けていけば、必ずフォロワーは増えていきます。


 「美辞麗句が書ける」書き手でもこの三つをやってしまうとフォロワーは激減していくのです。

 「綺羅きらびやかな表現はできない」けどこの三つを書かない書き手は、フォロワーが徐々に増えていきます。


 とくに小説投稿サイトではフォロワーの拡大が最大の要点です。

 「紙の書籍化」には閲覧数・評価点数・ブックマーク数が重要になります。




〜後略〜



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