29. :認識予測行動(中略あり)

【注意】

 今回も『pixiv』特有のことに言及しているため、編集致しました。

――――――――

 キャラは出来事に出遇ったときリスクに怯えます。

 しかしあえてリスクを冒さなければ出来事は解決しません。

 どうしたらよいのでしょうか。





認識予測行動


 人の「認識予測行動」は「もしこれをした(認識)」ら「こうなるだろう(予測)」から「こうしておこう(行動)」で成り立っています。

 「もし火鉢に手を突っ込んだ」ら「火傷するだろう」から「手を入れないでおこう」。

 「もし彼に告白した」ら「フラレるかもしれない」から「想いは告げずにいよう」。


 もっと概念的にいえば「行動した」ら「こういう結末になるだろう」から「こうしてその場をしのいでおこう」という心理です。

 これは自分の身を状況や環境から守ろうとする防衛本能によります。


 剣豪同士の真剣勝負では「先に動いた」ら「相手の返しを食らうだろう」から「先に動かないでおこう」という選択を両者がしています。

 だから互いにスキを作らず動くに動けないのです。

 これなどは自分の命を守ろうとする防衛本能の最たる例でしょう。





リスクに怯える

 この、人の「認識予測行動」が、本来その人が心に抱いている「主人公がどうなりたい」と思っていることを抑制してもいるのです。

 一歩踏み出して「もしこれをした」ら「こうなるかもしれない」けど「なにもせずにこのままでいるよりはマシ」なので勇気を持って「こうしてみよう」という考えになれたら。

 その人は「主人公がこうなりたい」への道を歩み始めることになります。


 そのまま歩き続けて、求めていた「主人公の結末ゴール」が手に入るかはわからない。


 だけど踏み出さないで変化しないことによるデメリットより、踏み出して変化を起こしてみようとリスクをとること。


 良くも悪くも人生を変えるのはこの意志の力です。





あえてリスクを冒させる

 しかし人は「安穏な日常が続いている間はリスクをとることに憧れこそすれ、あえてリスクを冒してまで安穏を壊されるのは嫌だ」と思っています。


 物語である小説でもこれは同じです。

 普段リスクをとろうとしない人が、あることをきっかけにリスクをとってもいいかもしれないと思うようになる。

 人はきっかけなしではあえてリスクをとろうとはしません。小説を書くときも「主人公がリスクをとってもよいと自然に思わせる出来事イベントを起こして、リスクを覚悟で動こうとする」ように仕向けてください。


 「もしガンダムを動かした」ら「ザクに倒されるかもしれない」けど「なにもせずザクにサイド7が破壊されるよりはマシ」だから「ガンダムを動かしてザクと戦おう」。

 これは典型的な例といえるでしょう。





認識予測行動で小説はより面白くなる

 小説が楽しく読めるのもこの「認識予測行動」によるところが大きいのです。


 一般人の主人公の身に何か出来事が起きて危機に陥ります。

 そして「もしこうした」ら「こうなるかもしれない」と身震いするけど、「なにもせずにこのままでいるよりはマシ」なので勇気を振り絞って「こうしてみよう」と決意するのです。


 この流れには淀みがなく、読み手が感情移入して「疑似体験」をしやすくなります。

 小説がすんなり読まれる理想的な形なのです。


 小説では「先に出来事イベントが起きて主人公が対処する」パターンが多いです。それも「認識予測行動」を理解していれば簡単にわかります。





「俺が俺が」と「なんで俺が」

 小説は基本的に「俺が俺が」と能動的に出来事イベントを巻き起こすタイプの主人公より、「なんで俺が」と受動的に出来事イベントに巻き込まれるタイプの主人公が多い表現形式です。


 能動的な主人公はマンガに多く登場します。

 絵で読ませるマンガならとても魅力的な主人公となるからです。


 一方小説はどちらかというと内向的な主人公が多く登場します。

 これは読み手のターゲッティングと同じでしょう。


 マンガは誰でも気軽に短時間で読めますから、短気な人でもぐいぐいと読み進んでくれます。

 週刊連載ではたかが一作二十ページ前後なのですから、誰でも手軽に読める。

 短気であろうと十分もかからず連載一話を読み終えられます。


 ですが小説は文字だけで書かれており、速読でもしない限り連載一話を数十分から数時間かけて読まなければなりません。

 短気な人が読むと仮定するにしては時間がかかりすぎるのです。

 だから短気な人は基本的に小説を好みません。





小説投稿サイトによって求められる主人公像の変化

 ただ近年、小説投稿サイトの隆盛により、一話を十分程度で読める小説も数多く現れてきました。

 しかも最新話が毎日のように掲載される。

 さらにこれら小説投稿サイトの小説は基本的に無料で読めます。


 コンビニで週刊少年マンガ誌を立ち読みする感覚に似ていますね。

 だから小説でも昔よりは「俺が俺が」タイプの主人公が増えてきました。

 またこの手の主人公は映像にするとさらに映えるのです。

 メディアミックス戦略としてアニメ化・マンガ化しやすいという利点を持っています。


 「俺が俺が」か「なんで俺が」か。

 どちらの主人公を選ぶかは書き手の自由です。

 書きやすいほうを選んでかまいません。


 「紙の書籍化」を目指すだけなら「なんで俺が」のほうが受け入れられやすいのは確かです。

 鎌池和馬氏『とある魔術の禁書目録』にしても川原礫氏『ソードアート・オンライン』にしても渡航氏『やはり俺の青春ラブコメはまちがっている。』にしても、当初主人公は「なんで俺が」と巻き込まれるタイプの主人公になっていましたよね。


 小説投稿サイトで爆発的に人気が出るのは巻き込まれ型の主人公が出てくる小説です。

 そこからアニメ化・マンガ化してさらに広く知られる作品にしたいなら「俺が俺が」のほうが利益が望めます。


 「紙の書籍化」からメディアミックス戦略に乗せるために主人公が「俺が俺が」型にシフトしていく作品が多いのも小説投稿サイト発小説の傾向です。





書き慣れないうちは「なんで俺が」の主人公を書く

 経験の少ない書き手はまず「なんで俺が」と受動的に巻き込まれる主人公を選ぶことをオススメします。

 処女作でいきなりアニメ化まで持っていくのはかなりの難題です。

 まずはその土台となる「紙の書籍化」を目指しましょう。


 「紙の書籍」で連載が続いていけば、そのうちアニメ化やマンガ化へのお誘いも出てくるはずですからね。


 それでも私が書きたいのは「俺が俺が」の主人公なんだけど。そうお思いでしたらどんどん書いてください。

 書いているうちに実力が身につき、自然と「俺が俺が」の主人公を違和感なく書けるようになります。

 少し遠回りにはなりますが、自分の書きたいものを書くほうがモチベーションが高まって書き重ねるのに苦労しません。それこそ雲霞の如くエピソードが湧き起こります。




〜(中略)〜





最後に

 今回は「認識予測行動」について述べてみました。

 字面は難しいですが、要は読み手に「こうしたほうがいいのかな」と主人公の心理を伝えることです。


 主人公の思考の過程を見せることで読み手は主人公の息遣いを感じ、主人公に感情移入して「疑似体験」を得られます。


 そして主人公が「俺が俺が」なのか「なんで俺が」なのか。

 主人公の基本的な性格を表す意味でも重要です。



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