第17発 最終話 結婚式
男が目を覚ますと、そこは現代の実際のここ日本であった。そこにはオフィーリア・・・・・・ではなく、男と同世代の白い布を顔に被った女性がベッドで寝ていた。男が女性の手をしっかりと握ると、奇跡が起きた。女性は目を覚ました。
女性「あなたは・・・・・・? そう。中学校の時のあなたね」
男「ずっと、言いたいことがあった。君は俺を振ってなんかなかったんだ。俺の記憶が間違っていたんだ。・・・・・・ごめん。手紙を読んで知ったんだ。それに・・・・・・好きだ、大好きだ、今でも本当に大好きだ」
女性「私も。あなたのことをずっと好きでした」
男「君はとっくに別の男と幸せになっていたとばかり思い込んでいた。俺は馬鹿だ。大馬鹿だ。もし大馬鹿な俺でよければ・・・・・・」
女性「ええ。ええ。もちろんです。私は、あなたと」
男「待って。俺から言わせてくれ」
女性「はい」
男「結婚、しよう」
女性「・・・・・・はい。喜んで」
この男女の結婚式にはこのお話の読者である“あなた”が立ち会った。
病院の一室で、世界で一番質素な結婚式が執り行われた。
よれよれのスーツをできるだけ丁寧に着こんだ男、いや男性は、病衣の女性のベッドを少し傾け起こすと、手を取り合いそしてキスをした。
男性「実はね、俺。いろんな世界を渡ってきたけど、唇同士のキスをするの、これは人生で初めてのことなんだ」
女性「まぁ」
男性「不思議な世界でバカ騒ぎして元気が出たよ。どれだけこの世界がバカで狂っていても、誰もがそれぞれの譲れない一線を持っておくと良い。それは何だったって構わない。俺はそれをファーストキスにした。結婚相手とファーストキスをする夢を追っていた。自分にどんな夢を課すかは、人それぞれだけどね」
女性「私も実は夢を課していました」
男性「君の夢とは?」
女性「・・・・・・初恋の人と結婚することです」
男性「お互いに夢がかなったな」
女性「夢のような、でも現実です」
男性と女性は事実上結婚した。中学校の時の不運が邪魔をして引き裂かれたかのようであった赤い糸。それは運命なんかによって引き裂かれうるものではなかった。数十年の時を経て蘇った本当の愛。男性にも女性にも、男やオフィーリアとしての記憶は鮮明だが、お互いに思い出しては、つい照れて笑ってしまいそうで、口には出さなかった。
男性「綺麗だよ」
女性「えっ何?」
男性「君という存在が」
その時、男性のガラケーが鳴る
山田「この度は、貴殿を不採用とさせていただきます。誠に申し訳ございません」
男性「承知しました。貴社のますますの発展をお祈りいたしております」
「本当の意味で」自信を取り戻していた男性の声は太く朗らかであった。
女性「就活ですか」
男性「ああ」
女性「ところで私、病弱で家事や仕事が出来るか不安です。それに、もう私は女として」
男性「馬鹿野郎!」
女性「え?」
男性「思い出してごらん。俺が告白した時の言葉」
女性「覚えていますとも。そう。そうでしたね」
男性と女性の人生は、ここにいよいよ第二幕へと突入した。
数十年前、中学校の昇降口にて
中学生女子「まあ、お菓子を? じゃあ、じゃあ、わたしのことを」
中学生男子「ああ。ぼくはどんなことがあっても、君を守るよ」
『氷河期おじさん、異世界にて美女を囲う』
-完-
氷河期おじさん、異世界にて美女を囲う えろっちのゲーム工房 @erocchi_games
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