第三章 色を変える(10)

 後日、母にさりげなく加害者の家族のことを聞いてみた。

「毎年、南の命日の翌日にお墓参りに来てくれてるみたいね」

「会ったの?」

「会わないわよ。お寺の方から聞いただけ」

 母が顔をしかめたから、遥は里絵奈のことは話せないと思った。母はふと遠くを見るような目をした。

「私たちと鉢合わせしないようにしてくれてるのかしら」

「……そうかもね」

 南の命日は里絵奈の父親の命日でもあるのだから、と思ったけれど、遥は母に話を合わせた。

「それでも、会いたくはないわ」

 ぎゅっと手を握りしめた母は、それに気づいて手をほどくとため息をついた。

「だめね……」

 許せないことがつらいのだろうか。

 遥はそんな母に言う。

「仕方ないよ」

 どうにもならないことはあるのだ。

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