第三章 色を変える(8)
週が明けて月曜。里絵奈と話をすると意気込んで登校した遥は、肩すかしをくらっていた。一限目の学科の授業に里絵奈が現れなかったのだ。他のクラスメイトも彼女が休んでいる理由を知らないようだった。
一限目が終わってから、思い切って電話をかけてみる。遥の心配は杞憂で、里絵奈は電話に出た。
「里絵奈? 今日、どうしたの?」
『ごめん、遥。ちょっと風邪ひいたみたい』
「大丈夫? 授業終わったらお見舞いに行くよ。買い物行けないでしょ? 欲しいものある?」
『ううん、移ったら困るから来なくていいよ』
「里絵奈……」
電話を切られそうな気配を感じて、遥は慌てて言い募る。
「私、何か里絵奈の気に障るようなことした? 何かあるなら言って」
遥はぎゅっとスマホを握る手に力を込め、里絵奈の返答を待つ。ゆっくり十数えるくらいの沈黙があった。
『……遥、ごめん。遥は悪くないんだ』
絞り出すような里絵奈の声のあと、ぶつりと電話は切れた。
「里絵奈?」
再び電話をかけてみたけれど、里絵奈は出なかった。メッセージも送ってみたけれど、返信はなかった。
二限目が終わっても里絵奈からの返信がなく、途方にくれた遥は史郎にメッセージを送った。里絵奈が授業に来ない、風邪と言っていたけれど様子がおかしい、どうしよう。そんな相談とも愚痴とも報告ともつかない内容だったけれど、史郎は律儀に返事をくれた。
『四限のあと、ニカフェで』
話を聞いてくれるんだろうか。遥は『了解』『ありがとう』とイラストを二つ送信した。
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