第三章 色を変える(4)
翌週、土曜。遥はワダ手芸店にいた。水曜に史郎と約束したのだ。
「それじゃ、今までずっと最初に買った毛糸だけで作ってたの?」
毛糸の棚の前で色を選ぶ遥に、史郎が驚きの声をあげた。
「うん」
「あんなの三個だけじゃ、すぐなくなるだろ」
「え、全然」
「ああ、遥ちゃんはペース遅いのか」
少し呆れたように史郎が言うのを遥は軽く睨んだ。史郎は気にもせず、遥が持ってきたレシピ本を開いた。
「単色のモチーフばっかり編んでたのか。次は途中で色変えるやつを編んでみたら?」
「そうしようと思ってた。えっとね……これ」
遥は史郎の手の中の本をめくって、作りたいページを開く。今まで作ったのはコースターだった。今度のは少し大きい。ポットホルダーと書いてあるけれど、要するに鍋敷きだろう。白とターコイズブルーの円形モチーフで、縁だけ差し色で黄色が使われていた。
「前の黄色が少し残ってるんだけど、足りるかな」
「どのくらい? 見せて。……ああ、大丈夫だと思う」
史郎は棚の毛糸を指して、
「同じ種類の毛糸がこれだから、好きな色選びなよ」
「ありがとう。とりあえず、本の通りにしてみる」
レシピ本の配色に合わせて毛糸を選び、レジで雅恵に会計してもらう。
「史郎、今日は教室があるから、上でやりなさいよ」
「そのつもり」
「すみません、お邪魔します」
「遥ちゃん、ごゆっくりねー」
雅恵に送り出されて、マンションのエントランスから二階にあがらせてもらった遥は、居間で編み物講習会となった。
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