第三章 色を変える(1)
恋愛感情とは少し違うかもしれないけれど、友情とも少し違う気がした。具体的に言うと、遥とは積極的に恋人になりたいわけでもなく、自分としては異性の恋人を作りたいと思っていて、それでも遥に仲のいい男ができたら気に食わず、万が一、遥が希望するならキスでもそれ以上でもできる気がする、という感じだ。――自分でもよくわからない。
「土曜日、和田君と二人で出かけたんでしょう? どうだったの?」
今日は週明けの月曜。その土曜はおとといのことだ。
新山大学のカフェはいくつかあって、いつもサークルで集まるのは古くからあるカフェ一号館、通称「イチカフェ」だった。今日は、美咲と遥と
美咲が聞くと、遥は「楽しかったよー」とにっこりと笑って、鞄から小さな紙袋を取り出して美咲と里絵奈に配る。
「おみやげ」
「嘘、何?」
早速開けると、中から出てきたのは、クロワッサンの柄のマスキングテープだった。
「ありがとう!」
「へー、かわいいね」
「これも手づくり?」
ハンドメイドのイベントに行ったのだと聞いた。――
「イラストは作家さんが描いたものだけど、マスキングテープはさすがに業者に頼むんだって」
「作ってくれる会社があるの?」
「その辺の店で売ってるのはどこかで作ってるんだからあるでしょ?」
「でも、それは頼む方も会社じゃん。個人で作れるものなの?」
里絵奈に反論してから遥に聞き直すと、遥はうなずいた。
「個人でも作れるんだって。でも、やっぱりある程度の数を注文しないとならないみたい」
「十個二十個じゃだめってこと?」
「うん。なくはないけど割高になるって」
「へー」
感心して相槌を打ちながら、史郎から聞いた話なんだろうなと思うと、やっぱりおもしろくない。だから、美咲は話題を変えることにした。むしろ美咲にとっては今日の本題だった。
「来週うちの大学祭でしょ。ねえ、二人とも手伝いに来れない?」
「手伝いって?」
「模擬店やるんだけど、人数少なくて困ってるんだ」
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