主人公はキリシタンでありながら、陰陽師である。陰陽師と聞くと、式神とか呪術とか、そういったものを思い浮かべる方も多いはず。しかし、陰陽師の歴史を見てみると、暦とか天文学の方が主分野である。よって、この作品にはそのようなファンタジックな陰陽師ではなく、より歴史を重視した陰陽師が描かれている。さて、何故陰陽師がキリシタンなのか? という疑問も上記から分かるだろう。暦も天文学も、西洋の解釈の方が正しかったからだ。
主人公が生きた時代は、まさに西洋を受け入れる一方で、西洋の宗教が弾圧された時代だったのだ。そんな間を生きた主人公と、その妻、そして子供たち。
この作品は、物語の文と歴史の文が交互に書いてある。歴史もまた、勝者たちの物語だとすれば、物語部分と歴史考察部分は、巧く溶け合う。
日本史専攻の作者様が描く、キリシタンでありながら陰陽師である主人公。もちろん、深い歴史物であり考察文であるこの作品は、好き嫌いが分かれるかもしれない。しかし、一度読みだすと止まらない。
本当の陰陽師の姿が見たい方は、読んだほうがいいと思います。
そして、日本史好きな方も。
キリシタンと陰陽師? と思った人も。
是非、御一読下さい。