二 陰陽師、その地味な史実
いまだかつて一目たりとも顔合わせたことなき宇治丸の父、その名は
賀茂氏勘解由小路家は、かの
なお、陰陽道賀茂氏の出自はいささか不確かながら、山城国(京都)の上賀茂・下鴨神社を氏神とする在郷氏族「
さて、ここで大前提を話しておこう。史実の「陰陽師」とは、俗に知られる魔法使いのような存在ではなく、本来は、朝廷の部署「陰陽寮」に属し、天文観測を元に暦を作り司る、いわば国立天文台職員のような理系専門技術職――あえて云ってしまえば、地味な下級国家公務員である。
もっとも、日柄や方位、天象などの「吉凶」が重んじられた平安朝廷にあって、陰陽師はそれらにまつわる「占い」や「厄祓い」をも任されるようになり、次第に、道教・神道・仏教(密教)の要素が渾然一体となった独特の呪術的体系を形成していった――さらには、やがて朝廷の官人以外の巷でもこれを模倣した占い・
いずれにせよ、宇治丸の父方・勘解由小路家は、乱世に翻弄され身を潜めつつ、京の都の片隅で日々暦司りに忙殺される下級公家。妖術使いや妖怪退治などは、残念ながらこの物語には無関係なことである。
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