2-4 行き交うメッセージ
慎一といつものように練馬駅で別れた後、真智子は今日、慎一から話されたことが気になって修司に携帯でメッセージを送った。
―久しぶり。少し気になることがあるから、話、できるかな?と思って、メッセージを入れてみます―。
すると、それほど間を空けずに修司から返信があった。
―今、どこにいるの?
―練馬駅―。
―今、俺、光が丘駅に着いたところだから改札のところで待ってるから―。
―了解。これから向かうからよろしく―。
光が丘駅の改札に向かう通路で真智子は改札を出たところで待っている修司の姿を見つけた。修司も真智子の姿に気付き、右手を挙げた。
「突然、ごめんね」
「もしかして慎一と何かあった?」
「慎一とは今まで通りだけど、ちょっと気になることがあって」
「ここじゃ、騒がしいし、立ち話もなんだから、近くでコーヒーでも飲みながら、話そうか。寄り道しても真智子は大丈夫?」
「少しなら大丈夫。疲れているところ、ごめんね」
「いいよ。そろそろ連絡、来ないかなって思ってたところだし、それに、友達だし。真智子も慎一も」
ふたりは駅近くのコーヒー店に入り、コーヒーをセルフ注文し空いていたテーブルまで運ぶとそれぞれ席に座った。
「実は慎一と真智子と三人で帰った日の次の日、慎一から真智子のこと聞かれて、以来、携帯で連絡取り合ってたんだ」
席に座った途端、修司が言った。
「えっ、そうなの?」
「うん。まあ……。はじめはどんな奴かなと思ってのことだったんだけど、あいつ、いい奴だからさ。真智子のこと大事に思ってるみたいで。俺は真智子への気持ちは変わらないけど、ふたりのことは応援するしかないかなって感じで連絡取り合ってたわけ」
「そうだったのね。今日は慎一が修司のことやけに話してくるからどうしたのかと思って気になったの」
「それだけ?他にも何か言われただろ」
「まあ、慎一からは特別な人だって言われたけど」
「俺にもそう言ってたよ。その気持ちは信じてもいいんじゃないかと思うよ。ただ……」
そこまで言うと修司はためらいがちに少し押し黙った。
「ただ、何?」
「あいつ、親のことでけっこう悩んでいるみたいだから、そのことが気になって……」
「親のことってお母さまが亡くなったこと?」
「亡くなった母親のことも引き摺ってるけど、それだけでなくて父親とはあまり上手くいってないみたいで、それでこっちに来たみたいだからさ。真智子はその話、聞いてない?」
「聞いてないわ。慎一とは音楽の話をすることが多いし。お母さまのことも詳しくは聞いてない」
「俺も詳しくは知らないけど、父親はいてもいなくても同じってメッセージが届いたことがあって、気になってたんだ」
「でも、いてもいなくても同じってことはないと思うわ」
「俺も言葉の綾だと思うけど。きっと母親が亡くなってからは一人のことが多かったとか、そういうことなんじゃないかな」
「そういえば、一人には慣れてるって言ってたわ」
「だから、俺としてはそのことが気になってるわけ。実際、親の影響ってけっこうあるからさ」
「そっか……。教えてくれてありがとう」
「友達だし、これからも何かあったら、相談に乗るし、いつでも連絡してよ」
「ありがとう。じゃあ、そろそろ、家に帰ろうか」
「まあ、だんだん受験本番が近付いてくるし、頑張れよな」
ふたりは立ち上がり店を出ると手を振って別れた。ひんやりと頬にあたる風が冬が近づいていることをそっと告げていた。
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