はじまりの話

君と僕は日を追うごとに近づいていった。

その理由の一つが、僕に仲間がいなかったこと。

とは言っても、学校全体でとかではなくて、もう少し小さい集団で。


僕が君のことをよく知らない頃の話。

あの頃は君のことを、違うクラスのとても姿勢がいい女の子、としか思っていなかった。

そんな君のことを、少し知る機会ができた。

同じ学習塾に通うことになったのだ。

仲の良かった同じクラスの友達の紹介で。


当時仲の良かったその友達は君のことが好きだった。

友達の好きな人だから、僕も君と話す機会が増えた。

当時は特別な感情はなかったように思う。


問題はここから。

ここから少しずつ道を外れていくことになる。

友達が、君に告白すると言い出したのだ。


若かりし頃の特有の軽いノリで、

お前ならいけるよ。

みたいに背中を押した記憶がある。

本当に仲良くしていたと思うし、半分くらいは本当にいけると思ってた。


ただ。


君はとても人気者だった。

何人もの男子にアタックされては、

考える時間をください。

で一旦その場を乗り切り、そのままフェードアウト、ってパターンが多かったらしい。あくまで噂だけど。


そして友達も、その餌食になった。


そこからというもの、友達は友達ではなくなり、彼は新しい輪を作り上げた。

僕以外で形成された輪は強固で、僕一人が集団からあぶれた。

それ以降一年と少しの間、学習塾では先生と君以外と話すことはなくなった。


それでも君だけは、ずっと僕の味方だった。


そのうちに学年が上がり、クラス替えの時期がやってきた。

仲の良かった友達とは別のクラスになり、君と僕が同じクラスになった。


神様のイタズラ。


それでもどんなに仲良くなっても、一定のラインより先に踏み入れたら全てが壊れる、そんなトラウマを目の当たりにした、始まりのような、終わりのようなお話。

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

裏表紙の手紙 屋根裏 @Atc_Strtl

★で称える

この小説が面白かったら★をつけてください。おすすめレビューも書けます。

フォローしてこの作品の続きを読もう

この小説のおすすめレビューを見る

この小説のタグ