ある日の帰り道

ある日の帰り道。

本当にあの日だけの数分間だったけれど、ずっと心に残る景色がある。


学校の一大イベントがあって、

僕はそのイベントを運営する側だった。

クラスの出し物なりなんなりを決めて指示を出したりなんだりしてた。

ちゃんと役目を果たしていたかどうかはこの際置いといてほしい。


どちらかというと当時の部活がしんどくて、

少しでも真っ当な理由をつけて休もうとしていた。

学校に遅くまで残るのもなんだか楽しくて、積極的にクラスに携わっていた。

部活の方では怒られたりもしたけれど、それ以上に楽しかったんだと思う。


その日もかなり遅くなって、同じクラスの仲のいい男子と、

同じ委員会の女の子と、君との四人で帰っていた。


全員仲良しだったから、ずっと四人で笑いながら話をしてて。

唯一自転車通学の僕も自転車を押して歩いてた。


気づけば男子は家の方向に向かってたのに、

同じ方向の君は家に帰る道を外れて歩いてた。

気づいてはいたけど、そのことには触れずに、

もう一人の子の家の方向に向かって裏道を使って三人で歩いた。


何を話していたかは覚えていない。

けどあの時、君は突然泣き出した。

それはなんとなく覚えてる。

本当に大切だと感じたから、とかそんな感じの理由だったかな。

そんな理由で泣く人がいるんだ、と驚いた記憶もある。

同じ委員会の子にも、茶化すとは違う雰囲気で、

ほら、って促された。


その先の記憶はないけど、どんな風に慰めたのかな。

僕は君を送って行ったのかな。


本当に大切だと感じたのはこっちの方だった。

今もそれは変わらない。

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