五枚目
私は、面と向かって先生にそれを問うことができませんでした。そんな、先生を裁くようなこと、できなかった。
だから最後の審判は、先生自身にしてもらうことにしたのです。先生の手で、結末を選び取ってもらおうと決めたのです。
それが、今夜のことです。
私は、先生のどストライクパンツを、いつものベランダに吊るしました。
三枚はいつも通り、洗濯バサミのついた角ハンガーに。そして四枚目を、軒下から紐で吊るした洗濯バサミに挟んで、高い位置に。
私は背が低いので、高い位置に取り付けるのは大変でした。何度も椅子から落ちそうになりながら、先生の手が届くか届かないかぎりぎりの所へ、どストライクパンツを吊るしました。
椅子の上に立ちながら、刑に処されるべきなのは私なのかもしれないと、ふと思いました。でも、先生になら処されてもいいと思いました。
あぁ、私はこんな時になって、いったい何を書いているんでしょうか。ばかですね。
これを書き終わったら、五枚目を吊るしに行きます。四枚目よりもさらに高い位置に吊るす予定です。落ちないように気を付けなくちゃ。
こんなことをしながらも、私は今、先生に、来ないでほしいと思っています。全部何かの間違いだったらいいのにと、そう願ってしまっているのです。
今ならまだ、間に合う。まだ、全部なかったことにできる。そう思いながら、この文章を書いています。
平井先生、来ないでください。
来ないで。
来ないで、ほしかった。
でも。
先生は、来てしまったのですね。
そして、取ってしまったのですね。
一枚目も二枚目も三枚目も四枚目も。そして、これを読んでいるということは、五枚目も。
高い場所に、手を伸ばして、すべてのどストライクパンツを、その手に掴んでしまったのですね。
裏に続きます。長くてすいません→
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