第14話包囲網
無数の魔獣兵がメインモニターびっしりに埋め尽くされている。
気味の悪い巨大な怪物たちが無数に闇夜に蠢き、こちらを殺気をこめた眼差しでみている。
メインモニターの左下に抽象化された画像が映し出された。
魔獣兵の軍団は半月形の布陣で戦艦ノアを包囲しつつある。
かの軍団から一機の人型兵器がノアの前方に進み出る。
闇夜に溶け込むような漆黒の機体であった。
それは禍々しく星の光を反射していた。
両腕を組み、夜の空を優雅に華麗に浮遊している。
見るだけで憎悪と怒りが込み上げてくるような、そのようなおぞましい機体だった。
「通信回線の接続要請です」
艦橋内に人工的な女性の声が響く。
その声の主はノアの制御コンピューター「パラケルスス」のものであった。
ちらりとミリアはユマとミカの顔を見る。二人は無言で頷いた。
パチンと音をたて、画面がきりかわる。モニターには肌の白い秀麗な容貌の少年が映し出された。
生きていて日の光を浴びていないのではないかと思わせられるほど、彼のものの肌は白い。
「私はブルーム総督にして怠惰をつかさどる七騎士の一人、皇位継承権十二位にあらせられるベルフェゴール伯爵閣下の従士アルベルトと申します」
「長い名前だな、おい」
それを聞いて武蔵がぼそりとぼやく。
「そうだな」
守も同意する。
「閣下からお話がございます」
そして画面が切り替わる。
画面には、かの黒騎士の端正ではあるが、自尊心の塊のような青白い顔がそこにあった。
唇の端だけをあげ、にやりと笑う。
「ライゼンベルグ王国の諸君。よもやこのようなものをつくっていたとは面白い趣向ではないか……貴君らは我が軍団によって、包囲されつつある。そこの薄汚いどぶねずみと、どこの馬の骨ともわからぬ輩の首をさしだせば、王女たちの命だけはたすけよう。皇太子殿下がご執心のようだからな。無駄な抵抗はやめ、皇家の後宮にはいらられることをお勧めするよ」
モニター越しにベルフェゴールの乾いた笑い声が響き渡る。
両の拳を握りしめ、ミリアが画面の黒騎士をにらみつけている。
悔しさのあらわれであった。
侮辱と屈辱の言葉を浴びせられ、彼女ミリアの精神は怒りに支配されていた。
人として扱われず、どうにか生き延び、この戦艦を完成させた。
人間の尊厳を取り戻すために。
その時、両型に暖かい感触を感じた。
守と武蔵がそれぞれの手を肩にかけていた。
「なあ、兄弟。こういう時どういってやるか知ってるか」
武蔵は守の目を見る。
「ああ、知ってるよ」
「くそ食らえだ、馬鹿野郎‼️‼️」
二人はほぼ同時に大声で叫んだ。
モニターの接続が途絶える。
「あの高慢ちきな蛇野郎の鼻をへし折ってやろう」
守はミリアに言う。
「我らが友にあたえた屈辱は死を持ってあながってもらう」
ミリアの背中を軽く叩き、ミカは宣言する。
「出撃だ‼️」
元気いっぱいにユマは宣言し、
「おうよ」
武蔵は短く答えた。
シューティングスター・ナイト・クロニクル 白鷺雨月 @sirasagiugethu
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