Go! モモタロウ! 地球を救え!

新巻へもん

我らタロウ戦隊

 遠い、遠い、昔、銀河の片隅で……。


 川で老婆が洗濯をしていると、大きな桃の形をしたものが流れてきた。びっくりしながら川に入り、老婆は桃を捕まえようとする。桃を両手で抱えてみると意外なことに老婆が抱え上げることができた。

「なんじゃ、中身は空か。まあ、わしとじーさまの食う分ぐらいはあるじゃろ」


 老婆が家に帰ると程なく老爺が帰って来た。

「山は暑うてならんな。婆さん、帰ったぞい」

「おお、爺さん。川でええもん拾うたぞ」

 桃を見せると爺さんも驚いた。


「なんと大きな桃じゃ。これなら飽きるほど食えそうじゃ」

「それがの。ワシが抱えられるほどの重さなんでの」

「まあ、切ってみれば分かるじゃろ」


 老爺は腰に差していたナタを桃に当てる。しかし、いくら力を入れて切ろうとしても切ることができなかった。

「不思議なもんじゃ。触ればそれほど硬くないのに、いかがしたもんか?」

 そう言って、老爺が老婆を見たときだった。桃が二つにゆっくりと開くように割れると中から元気な男の子が出てきた。


 こうして、桃から出てきた子供は桃太郎と名付けられ、老夫婦の愛情を一杯に浴びて育つ。


 桃太郎が15歳になったある日。桃太郎は家の納屋の地面が桃色に光り輝くのを見つけた。あいにくとおじいさんもおばあさんも留守にしている。桃太郎は不思議に思って鍬で地面を掘ってみた。1尺ほど掘り下げると何かに鍬が当たる。手で土を払いのけて見ると桃色の柔らかなものに触れた。


 その途端にまばゆい光があふれ、低い唸り声と共に地面の中から何かが現れる。それは巨大な桃だった。2寸ほど空中に浮かび上がると移動し、土の上に降りる。あっけにとられる桃太郎の目の前で、透明な人影のようなものが浮かび上がる。不思議な銀色に輝く服を着た男は口を開いた。


「時が来た。今からお前に真実を伝えよう」

 その言葉と共に桃太郎の頭に様々な映像が流れ込む。


 ***


「しまった。逃げられた」

「くそ。ようやく、苦労してやつらを追い詰め、再び地球を取り戻すことができたと思ったのに」

「やつら、どこに跳躍した?」

「指令、見てください」


 一人の男が指さす先には、34.35N、135.01Eという数字と文字が明滅している。

「馬鹿な? 移動していない?」

「いえ、ここを」

 その脇には925、05、05の数字が新たに表示される。


「くそっ。やつら遡りやがった」

「どうします? このままでは?」

「我らの技術ではまだ大人は……」

「ちっ。しかも、やつら前後15年に時空障壁を展開しています」

「仕方ない。我々の最強の子供達を送りこもう」


 ***


 桃太郎が意識を取り戻すと、大きな桃は消え、右手に長さ25センチメートルほどの金属製の筒が残されていた。桃太郎は天命を知る。


 その夜、桃太郎はおじいさんとおばあさんに手をついて言った。

「これから、大変なことが起きます」

「どうしたのじゃ、桃太郎」

「奴ら……、鬼が攻めてきます」

「なんと!?」


「私は鬼を退治しに行かねばなりません」

「どうして、そんなことを急に言いだすのじゃ?」

 桃太郎は悲しそうな目で言う。

「それが私の定めなのです。今まで育てて頂きありがとうございました」


「そうか。決意は固いようじゃな。婆さん。こうなったら気持ちよく送り出してやろう」

「おお、そうじゃな。爺さん」

 こうして、桃太郎は餞別にキビ団子を作ってもらって旅立った。


 10日ほど歩き、山を越えたところで、桃太郎は数人の人が巨大な体躯の何かと争っているところに出くわす。数人の男が刀を抜き切りかかるが、人の背丈の2倍もあろうかというその存在に傷を負わせることはできなかった。

「くそっ。この鬼めっ」


 鬼と呼ばれた存在はガハハと笑う。

「そのような文明で我らに勝とうとは哀れだな」

 鬼の手に握られた何かから数条の光が放たれ、男たちは倒れ伏す。

「くく。アースマンどもがゴミのようだ」


 そこへ桃太郎が駆け寄る。

「無駄無駄。こんどは刃物すらもたぬ野蛮人か。死ねい」

 手から放たれた光が桃太郎を襲う!

 しかし、桃太郎の手に握られた筒先から棒状の光があふれて光を弾いた。


「まさか。貴様は?!」

 桃太郎は一気に間合いを詰めると光の剣で鬼を一刀両断にする。

「ぐわ。まさか……フォトンサーベルだと……」

 鬼は断末魔の叫びをあげると地面に倒れた。桃太郎はつぶやく。

「武器は時空転移ポッドにあったからいいが……、どこかでブラスターを防げる防具を手に入れねば……」


 しばらく、桃太郎が進んで行くと犬に出会う。犬は桃太郎に話しかけてきた。

「3Dセンサ及び赤外線モニタにより有資格者と確認。DNAサンプルの提供をせよ」

 桃太郎はお婆さんにもらったキビ団子を一口齧ると犬に向かって差し出す。


 犬はそのキビ団子を食べた。

「DNAサンプルにより本人と確認。擬態モードから戦闘支援モードに移行」

 犬が桃太郎の足にまとわりつくとみるみるうちに形を変え、下半身を覆う外骨格スーツとなった。色はもちろんド派手なピンク色だ。


 その後、桃太郎はサル、キジと出会い、それぞれ胴とヘルメットを手に入れる。やっぱり色はピンク。外骨格の人工筋肉のサポートを受け、桃太郎は道を走り海に出た。ヘルメットに触れると視線に合わせて地理情報が表示される。海の向こうに円に囲まれた赤い十字が表示された。北緯34度35分、東経135度01分。


 桃太郎はGEエンジンを一吹かしすると猛スピードで海を渡り始める。10分程で目標の島にたどり着いて上陸を果たした。その途端、島の奥の要塞からミサイルが発射され桃太郎の周囲に着弾し破裂する。同時にレーザー光線と弾丸の雨が桃太郎を襲った。桃太郎はホバリングしながら攻撃をかわすが一歩も前進できなくなる。


「まさか、はるばる2千年の時を超えて追って来るとはご苦労なこった。だが、一人で何ができる。ぐはは」

 スピーカーから勝ち誇った声が漏れる。

「お前を倒し、お前たちの祖先を皆殺しにして、この星は頂くぜ」

「させるかっ!」

「威勢だけはいいが、小僧一人に何ができる?」


「一人じゃないぜっ」

 その声と共に今までミサイルを吐き出していた発射抗が吹き飛ぶ。肩に円筒形のものを抱えた真っ赤なパワードスーツの男がいた。

「赤太郎参上!」


「なにっ?」

 慌てる声を尻目に次にレーザー銃が消滅した。

「遅くなった。緑太郎推参!」

 弾丸をまき散らすレールガンも沈黙する。

「黄太郎もいるぜっ!」

 

 どかーん。

 桃太郎・赤太郎・緑太郎・黄太郎4人の活躍によって、O2星人たちの移動要塞は木っ端みじんに粉砕された。彼らの活躍によって、未来の地球は救われる。4太郎は未来の科学技術でできた武器やパワードスーツを海深く沈めると、移動要塞を構成していた金銀を集めて故郷に帰って行った。


 桃太郎とアカ太郎の事績は昔話として後世に伝わるが、緑太郎と黄太郎の名は歴史の波に消えたと言われている。一説にはアカ太郎の仲間の御堂っこ太郎は、元々はみどりっこ太郎だったとも言われているが真偽は明らかでない。


 おしまい。

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