キツネのポンピと黒衣の男
西田 正歩
第1話
キツネのポンピは、森に入る時はいつも父から貰った懐中時計をもって入っていく。
薄暗くなる、四時半を前に森から出るためであった。
森の中に入ると、鳥さん達が合唱を始め、ポンピがその声につられ歌を歌う。
「凄く、上手くなってきているね」
「チャーズのおかげだよ。」
チャーズは、この森のみに生息する小さな小鳥達の中の一羽で、体が真っ赤で太陽の光を浴びると、羽毛が光輝きとても美しい。
その中で、チャーズとは友達になり、歌の先生までしてくれていた。
「ポンピは、今日はどこまで行くつもりだい?」
「チャーズはこの森の先見たことあるかい。僕は一度見たいんだ、ずっと遠くをね。僕は森の地図を作って 行き、先を目指すんだ。」
「父親の形見持って、頑張るね」
僕の頭に、小鳥のチャーズはとまると、少し歩くたんびに、自分が知らない森の地図の場所を案内してくれていた。
この森には、幻覚・幻聴を引き起こす場所が何ヵ所かあるので、チャーズは道標にはとても素敵だ。
「でも、この先にはただ森が続くだけ、何もないかもだけどね」
「夢がないな、それだけじゃないだろう、冒険が僕らをワクワクさせる」
「そこまで、感じないが?」
二人は話ながら、奥へ奥へ入っていった。すると、水の音が聞こえてきた。
水の発見に、これほど喜ぶポンピにチャーズも嬉しくてたまらない。
流れ出る湧き水に、透明な水面からは魚が飛び跳ねて元気そうだ。
「魚さん、こんにちはー」
元気な対応に、「こんにちはー」と魚も笑って返事してきた。
「チャーズ、こんな世界がまだ別の場所にあるかもと思ったら、たまらなくワクワクするだろう」
「ポンピの冒険好き、そんな君は好きだけど、全ての世界が安全場所だけではないんだよ」
チャーズの言葉には、浮かれるだけの自分に“カツ“をいれられたようであった。
湧き水の池の向こう側に、黒い服を着た人間がボーと立っていた。人間が池の中に入ると一瞬にして、池の水が汚れ始めたのであった。
魚たちは、恐怖し僕らの方に集まりだした。
ポンピは、急いで池から人を引きずり出すと、水の異変は止まり、もとに戻った、
「こら、人がこの世界で闇を見せたらいけない、この森は感じやすいから」
チャーズは体に舞い降りて、一発はたいた。
「この世界は、静かに優しく(時間)が流れているんだ。お前さんのどんよりの気持ちが、この(時間)を狂わしてしまうんだ。」
チャーズは、また、ポンピの体に戻る
、ポンピは人間を起こすと、「すいませんでした。」人間に頭を下げて、立ち上がらせ、太い木の根に座らせるのであった。
「その、暗い思いどうにか、浄化できませんか?この森はあなたを異物としてしか扱っていません。」
「人間は、何かしらのダークな部分を持っている。悪は、決して悪いだけではありませんが、ここには相応しくないのです。」
「わっ私は、何故こんな場所に?」
「静かな秒針が少しずつ狂い、あなたまでも狂わしてきたのです。自分の意に反して動くと、体と魂は一定の間離れてしまう事があるんです。幽体離脱のように体から離れてしまった魂は、自分の心の癒しを異次元を通って、この世界まで来るのです。
そして、浄化されれば、清清しく家主の元に魂が戻っていくのですが。時時、闇(不)のオーラが強すぎて、こっちの世界の方が影響を浴びてしまうのです。」
「では、僕のオーラが、川を汚し木を森を枯らしてしまおうとしていたのですか?」
二人は頷いた。
「なら、帰ります。」
それは誰でも考える事ではあるが、ポンピは、待ったをして、人間に話した
「ただし、これほどの闇のオーラが強いと、今のまま体内に戻れば、いずれ自ら命を断つことになりかねません。」
「ただ、ここに居すぎると、また厄介なことになるのです 」
頭の上で、チャーズも話始めた。
「いいかい、ここは言ってみれば(極楽)と対して代わりない世界、その世界は人間のためには出来てない。もし、このまま不のオーラでいれば、この森は、あなたを森に適した姿に少しずつ変えていき、自分も姿を保てず、(人黙樹) と言う、樹木になり、森の一部になってしまいます。
すると、本体にも影響があり、鬱になり自分の自我を一から作り出すために、それまでは、廃人のような生活を生きなければなりません。全ては木に生える実が、新たな自分を作り出すのです。しかし、実のる時期は人それぞれなのです。 」
「すっすると、この森の木達は、元々は自分の慣れの果てってことかい」
「はい、そうです」
「しかし、おかしくないか?鬱になるのなら、これだけの木が生えていれば、何度となく廃人になってたはずだが、」
「子供の純粋差は、どんなに人黙樹になったところで、生命力の強いので実のなるのも早いのです。」
「この世界の森は、決して多い方じゃないんですよ。」
すると、人間は静かに水の場所を眺めながら、「少し、いや今日一日を自然の中で、リフレッシュしたいと思います」人間は、ジッと動かなくなった。
清らかな気持ちを持てたのか、不のオーラが森を枯らすことはなかった。
その姿を後にして、ポンピとチャーズはまた森の中を探索していく。暗くなりかけてあの池を通ると、彼の姿は無かった。
「でも良かった。この世界の時間が狂わず、ちゃんと流れている」
懐中時計を確かめてにっこり笑う。
「ポンピとこの撲が、あの人間の自分の心を管理している者達とはわからないだろうね。」
この世界には、別に時計(時間)を管理する者と怒り・哀しみ・喜び様々な感情に別れて、管理されているのだ。
それが、全てに大きな森ができるのだ、人黙樹の森林を生やして、彼らは生きていくのであった。
完
キツネのポンピと黒衣の男 西田 正歩 @hotarunohaka
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