第4話 ホエールキング最下層から見た風景
「わが社は、生まれや生い立ちなどでは差別いたしません。『誰でも』入社していただけます」
秘書がメガネを2回くいくいと上げた。
(遠回しにさっきの面接不合格レベルだったって言われているように感じるな)
「では、わたしについて来てください」
綺麗なオフィスの更に下の
みすぼらしいオフィスの更に下の
倉庫・・・
「え・・・ここ?」
「ええ、新人は必ずここから業務をスタートします」
社長
↑
役員
↑
局長
↑
本部長
↑
部長
↑
課長
↑
係長
↑
一般社員
↑
一般運送員
↑
倉庫整理
「とわが社の組織はこのように構成されております。出世は、年1回、上の身分の方の推薦と試験の結果で決まります」
「こら、きりきり働け!!」
「ひいい」
「・・・なんか『ムチ打ってる人』がいるんですが・・・」
「気のせいでしょう・・・ではこれにて」
秘書はそそくさと上に登って行ってしまった。
本当に気の遠くなるような広い倉庫で
たくさんのひとが荷物を運んでいる・・
$$$
「おや、君、新人さんだね。最近、新しく入ってくる人が多いよねぇ」
「そうなんですか?」
「ほら、あそこにいる人とか」
指差した先には、
ひげ面の中年男がひとり
「わたしは、新人ではない!係長だ!」
その人は、
影が薄いというか、
印象に残りにくい感じがした。
「係長になるのが目標なんですね」
「違う、係長だったのだ!!・・・ある日突然、誰からも存在を忘れられて・・・」
「あはは、そのギャグ面白いですね」
「ギャグじゃねーよ!」
(あれ、どう返すべきだったんだ?)
「休憩終了!さぁキリキリ働け!!」
重労働の忙しさから
係長だったという彼の存在さえも心に残らなかった。
(つーかマジできついな、ほとんど奴隷状態だ)
この倉庫だけでも無数の人が働いていた。
きっと、誰かが抜けたり入ったりしても気が付かないほどに
そこが少し怖くなった。
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