第38話 水溜り

 駅前の公園に、雨よけのあるタイプのベンチがあるんですよ。そのベンチの後ろに車道がありまして。雨宿りなんかしてると、後ろで水溜りを歩く音が聞こえるんです。


 一週間前でしたね。傍の自販機でコーヒーを買って、ベンチで飲んでたんです。その日は小雨が降ってました。

 ニ、三人分の、水溜りを踏む音が聞こえたんですよね。別に、なにもおかしいことは無いんですけど……。

 ……雨の日でしたから。多分、寒かっただけだと思うんですけど。

 悪寒がしたんです。背筋をゾゾゾって。

 なんとなく、後ろを振り返ったんですよ。そこには、サラリーマンが一人歩いているだけでした。

 私は二人以上の足音を聞いてるんですよ? 私の聞き間違いならいいんですけど……。でも、聞き間違いじゃないんです。

 水溜り。そう、水溜りはちゃんと三人分の水跳ねを残してましたから……。

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