第37話 紅葉

 知人の女性との飲み会帰りに、聞いた話だ。

 

     ✻


 紅葉の終わり頃になると、思い出すんですけどね……。


 時期が過ぎれば、あんな真っ赤な葉だって茶色に干乾びるんですよ。生気が尽きてくイメージって云うんですか? そのせいで、変な幻聴が聞こえたのかもしれません。

 丁度、午後八時くらいでした。風が強い日でしてね。乾燥して丸くなった楓の葉が、コロコロ転がるんですよ。

 風と同時に転がり始めて、カサカサ音を立てながら足元を通り過ぎるんです。秋っぽい反面、ちょっと怖いんですよね。私だけですか?

 で、自宅への帰路に小さい公園がありまして。横切ろうと思って公園に入ったらですね、風が吹いたんです。

 さっきも言った通り、丸まった枯れ葉が足元を転がるんですけど……。

 通り過ぎた後でしたね。


「はぁ……はぁ……。……ふふっ」

 って子供の声が聞こえたんです。

 息切れのあとに、ちょっと笑ったみたいな。

 周りには誰もいませんでしたよ。


     ✻


「……全部霊の仕業だと思うと、怖くないですか?」

 彼女はそう言って、街路樹のない道を選び帰っていった。

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