第36話 水滴

 防水のスマホに機種変更したい。

 友人はそう言い、語り始めた。


     ✻


 聞いたことあるかな……。駅前の公園に出るっていう幽霊の話。木陰に女の霊が出るって噂になってるあれだよ。

 正直、幽霊なんか信じてないからさ、全く気にせず待ち合わせの場所なんかにしてたわけよ。

 一週間前も、そんな調子で公園まで行ってベンチに座ってたんだけどな。丁度、木の下にあるベンチだったんだわ。

 基本待ち時間なんかはスマホを弄ってるんだけどさ、その日も顔を伏せてスマホを触ってたんだよ。


 ぽとっ、ぽとっ


 って。何度も拭うんだけどね。丁度、木の葉の朝露とかなんかが、スマホの液晶に垂れてくるんだよ。

 ちょっとだけイラッとして、木の枝を見上げてね。その後、スマホに目線を戻したんだけど……。

 液晶が濡れると、スマホって誤作動するじゃないですか。だからかな……。


「目がアった」

 って。スマホの検索バーに、自分が打ち込んだはずの無い文字列があったんだよ。


     ✻


 あれから、時々液晶が濡れることがあるんだよね。その度に「目がアった」ってどういうことなのか考えるんだけどさ……。あの木の上に誰かいたんだろうな……って。

 最近、濡れる頻度も落ちる水滴も増えてきてな。そろそろ防水にしないといけんよな……。


 彼は液晶をティッシュで拭いながら、そんな話をしてくれた。

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