第35話 通行人
「あのお惣菜屋さんの奥さんが、亡くなったらしいぞ」
「あんなに元気だったのにねえ」
そんな会話を両親がしていた。
お惣菜屋さん? あ、そういえば……。
私はゆっくりと両親の方を向き、話を切り出した。
✻
私の友人の話なんだけどね。
学校から帰る道に、丁度お惣菜屋さんがあるじゃんか。あそこを通るたびに、絶対に足を止めるの。
「毎回どしたの?」
そう聞いたらね、「聞こえないの?」だって。
友人曰く、数字が聞こえるんだって。通るたびに、100、91、70みたいに不規則な数字を一つだけ言うらしいの。
ただ、確実に数字は減ってるみたいで……。
昨日は「3」って聞こえたらしいんだけど。
✻
「なんだ、その気持ち悪い話」
両親は、怪訝な表情をしてこちらを見る。
「でね……、あんまり言いたくないんだけど……」
少し迷って、切り出す。
「この家の前でも聞こえるんだって……」
「昨日の時点でね……」
「5だって……」
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録(無料)
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます