第32話 ストーカー

「毎夜毎夜、玄関に人が立っている」らしい。


 ストーカーから逃げて、そのマンションに引っ越してから、それを見るようになったんですよ。

 一時間もするといなくなるんですけど……。自宅に帰って来たときに玄関前にいられると、ちょっと怖くてね。ストーカーの件もあったから。


 そういった理由で、Aさんは日没前には自宅に帰るようにしていたそうだ。


 人が立っているって云ったでしょ? 性別がわかんないの。こう……、黒いモヤみたいな感じで現れるから。

 ただね、あれはあれ自身も性別がわからないんだと思うの。

 間違って、玄関の除き窓からあれを見たときにね、こう云ってたの。


「あの……、えっと……、私は……、僕は……」


 あれ自体も自分のことをわかんないらしいの。

 でもね、最近わかってきているらしくて……。

「えっと……、殺す? 殺す? 違う?」って。

 


「なんか喋り方が、あのストーカーみたいで……。これ、多分生霊ですよね」

 そうAさんは云っていた。

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