第12話 め

 喫茶店で窓側の席に座ったときの話。


 友達と待ち合わせに指定した喫茶店は、道路側がガラス張りで、光の通る小綺麗な店だった。

 絶え間なく歩行者や車が往来する中、道の反対側に女性が見えた。目立つ服装ではなかったと思う。

 ただ、信号が青になってもこちら側に来る様子もなく、こちらをじっと見つめている。

 薄気味悪くて目を逸らしていると、ゆっくりと近づいてきて顔を覗き込まれた。数分の間、ガラスの向こうからの視線に耐え友達を待つ。

 きた。「お待たせ」と言いながら友達が近づいてきて、少し安堵する。

「見える?」

 その質問に友達は「なにが?」と答えた。

 あの女性はいなくなっていた。

 ただ、視線だけは感じている。店内にはいない……。

「あっ……」

 友達の黒目の中に、誰かの眼が映った。

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