第10話 はな

 校舎に沿って花壇が並んでいる。そこに咲いている花は、殆どがグラウンドに顔を向けていた。


 一区画だけを除いて。


 ただ真っ直ぐ、校舎を見上げていた。

 三階の教員室を見つめているのだろうか。それとも屋上を見つめているのだろうか。

 放課後、どうしても気になってしまい先生に聞いてみた。


「見つめているんじゃなくて、顔を逸しているんだよ」


 そう言って、窓からその花を指差した。

 こちらを見上げる花の右後ろ。覗き込むようにしてしゃがんでいる、男の子がいた。

 数十秒の間、その顔を見つめた。瞬きは一切しない。


 あっ、目があった。

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