第9話 プール

 紅茶を飲みながら語ってくれた。


 スイミングスクールに通っていた頃。私はまだ小学生で、泳ぐのもやっとな状況でした。

 ある日、停電でプール全体の電源が落ちました。いきなり真っ暗になった視界に動揺し、口から空気が漏れたのが分かりました。

 正確には真っ暗になったからではないんですよ。暗い水中に誰かいたんです。プールの底と私の間に、仰向けの男の子がね。

 半開きの口と見開いた眼が印象的でしたね。

 いつも明るい場所だからって油断しちゃいけませんよ。


 彼はそう告げると、紅茶に映った自分の顔にビクッとし、苦笑した。

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