第8話 だれ
幼稚園児の頃のお話。
その頃はよく砂場で遊んでいた。砂山を作り、対面に友達を呼び、双方向からトンネルを掘る。砂山の中で互いの手が触れ合えば、トンネルの完成。
単純だからこそ皆が熱中し、何かを呼び寄せてしまったのかもしれない。
その日、私と友達はいつもよりひと回り大きい砂山を作り、トンネル工事に着手した。
砂山は大きい程崩れやすい。だから今までより集中し、指先に力を込める。
まだ、手が触れ合うには足りない。もっと掘らなければ。力を入れたタイミングで、
「手ぇ見つけた!」
友達が嬉しそうに顔を上げた。
「まだだよ」
私の手に触れ合う感触は無い。友達の気のせいだ。
「ほら!手ぇ繋いだ!」
そう言うと同時に、友達は砂山に顔を突っ込んだ。
何をしているのか分からなかった。
今度は後ろに倒れ込んだ。
砂山から手が抜けると、泣きながら園舎に走っていった。
その後先生に呼び出され、なんだかえらく怒られた。
友達曰く
「砂山の中の手に引っ張られた。お前がふざけてやった」
だそうだ。
トンネルは開通していなかった。
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