第6話 こえ

 夕方の帰宅時間は、道に人や車が増えて雑音に包まれる。

 そんな学校からの帰り道。私はイヤホンでラジオを流しながら、帰路についていた。

 後ろから歩いてきた会社員の男は、私に気づかなかったのだろうか。追い越しざまに私の肩を押しのけた。

 イヤホン越しで足音は聴こえなかったため、私は少しだけ驚く。

 程なくして交差点に差し掛かった。


 赤の信号。


 先程私にぶつかってきた会社員の男は、気づく様子もなく通り過ぎようとする。

 まあ、何があっても私は関係ないし……。

 そんな考えで男を見ていると、


「ハクジョウモノ」


 甲高い声が耳元で聴こえた。

 録音した声に倍速をかけた、そんな声だった。


 別に何事もなく、その男は安全に交差点を渡りきった。

 決してイヤホンは外れていない。

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