第4話 かみ

 私はあまり髪の長い方ではないんですけど

 ね。


 よく、長い髪の毛が挟まっているんです。


 雑誌とか本とかにですよ。ええ。


 幽霊とかは見たことないんですがね。


 ただ、あの時は少しだけ怖かったな。



 そう、彼は前置きをした。



 丁度、日をまたいだ頃。私はバイト先からフラフラとアパートに帰ってきました。


 慣れた手つきで鍵をあけ玄関の電気をつけると、今日に限って湿った空気に包まれたんですね。


「カビ生えないかな……」


 独り言を呟きながらユニットバスまで行くと、湿気の原因がここからであることに気付いたんです。


 いつもと違う空気に違和感を感じつつ、手を洗おうと蛇口を捻ると、


 ゴゴゴッ


 そう音を立てて黒く長い髪の塊が蛇口から出てきたんですよ。


 

 すぐに水で流れてしまいましたがね。


 誰かいるのかもしれませんね。



 

 彼は未だにその部屋に住んでいる。

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