第2話 ペットボトル

 グシャっといって潰れる。


 そう言ってAさんはペットボトルを嫌う。



「目がね、合ったんです」


 伏し目がちに、窓の方を向く。

 

「飛び降りる人って、どうしても顔がビルの方を向くじゃないですか。運が悪かったんですかね。顔が見えましてね」


 ピキッとペットボトルの軋む音がしたと言う。


「その人が地面に打ちつけられた丁度でしたね。机の上のペットボトルが潰れたんです」


「グシャって」


 無理やり握り潰したようだったらしい。


「あれ以来、近くで不幸があるとペットボトルが潰れるんです」



 そう言って、Aさんは水筒に入ったお茶を飲んだ。

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