第6話 収束

「全世界の皆様、こんにちは。私は鈴木 堂立と言います。しがない歴史学者をしていますが今日は宇宙の天頂に座す神の言葉を伝える使者として皆様の前に立っています」

 五月一日未明に起こった天変地異に日本で元号に名を借り令和事象と名付けられて一週間が経過したころ事象の被害を被った各国の報道機関にとある男性から各国の言語で読み上げられたメッセージが届いた。届いたというのは正確ではなくいつの間にかそこに存在していたというのが正しい表現であろうか。一斉に一定の時間に放送機器のテープ、磁器ディスクなど内容物の全てを書き換えるように出現したそれはあらゆる事情に構うことなく電波に乗った。

「伝えたいことは簡単です。神は美しさを失った惑星に原初の美しい色を取り戻す為に色々なものを造り、育てました。赤々とした火山、深い青さをもつ海、鬱蒼と繁った深緑,宇宙の光を映した水晶。今の地球に失われた美しさの全てを再び表しました」

 唐突に流れた映像と音声にテレビ、ラジオの前にいた人々は釘付けになった。急激に変わった環境、今まで見たこともない色で構成された植物や水晶そういったものに不安を覚えていた彼らは情報に飢えていた、故に一片たりと聞き流すものかと熱心に見て、聞いていた。

「神は美しき惑星を取り戻し満足しておられ、今後、知的生命体が暴走を引き起こし惑星を破壊するなどの事態が起こらない限りは静観するお考えです、今後も神の御意思に従い星の発展を願い文明の発達につくしてください。これにて神より賜ったお言葉を終えます」

 終わった。半ば犯行声明のような文言、オカルトのような内容。それを受けた人々はまず意識の余白をつかれそれからふつふつと沸き立つ感情に支配された。しまいには放送局に電話を掛けるもの、インターネットでの拡散に走る者等々多様な反応が起こりやがて収束した。

 人々は復興を続けそしていつか警句も少数の犠牲も忘れ発展を続けるだろう、明るい未来にたどり着くと信じて。

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回帰と発展 河過沙和 @kakasawa

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