第5話 伝言
「俄には信じがたいかもしれませんがこの話は本当です。まぁ詳細は朝になればわかるでしょう」
「その神というのは自分勝手にこの星を書き換えたのですか?」
「もとより持ち物である美しい星を作り直しただけですよ、ただ住人たちを無視しただけで」
星はみんなのものというキャッチコピーを掲げる環境団体というものが存在するが彼らに神が実在すると教えたらどうなるのか楽しみだ。という関係のない方向に思考が飛んで行ったのは許していただきたいと思う、話の中途で正常な思考を取り戻した私は人型の話す事柄一つ一つに恐怖と好奇の目を向け続けていた。おおよそ普通と言われる人間が神が実在すると冷静にさも当然といった感じで心の底から話を切り出せば頭がおかしくなったか、そういった宗教の信徒にでもなったかと疑うだろう。だが目の前にいる明らかに人でない物は存在そのものが根拠足りえる気がしていた。
「それでなにかを今現在の地球で起こしたと?」
「明確には違います。この現象、私達使者は単純に回帰と呼んでいます。回帰は遅くとも数百年前には決定し、今日この日この時間に起こることがあらかじめ確定されていたのです、そのための環境も調整してきましたし」
「そんなことはあり得ない。そんなにも前から確定されていたのなら我々人類が気づかないはずがない、何らかの兆候があってしかるべきだ」
もしそんなことがあり得るのであれば我々人類のいや地球生物全ての知識、感性の敗北であろう。到底認められうるものではない。
「話の分からない人ですね…いやだからこそ使者としてふさわしい。ちゃんと理解して判断してくださる方が説得力も増すというものでしょう」
「すまんが、そのようなことが出来うる神が存在する物質的証拠を見せてくれないか?先からすべて本当だと考えて話を聞いていたんだがどうにも信じられない。君の言う通り神の仕業であるならそうかもしれんがね」
出来の悪いSF小説でも物質的な状況位は書くはずだ。超能力で地面が割れたとか宇宙人に殺されたとかそういった劇的なものを。
「良いでしょう、その目に焼き付けてください神の御業を」
大仰に腕を振り上げ頭の上で手を握りこみ天を仰ぎ目を閉じ恐らくは祈り始めた。
頭の上に徐々に光が広がり形を成しつつ収束していった。強い光が発せられているがマジックで使われる視界を遮ったり、誘導して見えなくするといった手法とは違うようだ。やがて光が収まりおおよそありえないものがコトンと音を立て床に落下した。
「これが私に神が授けた業の一部です。エネルギーを収束させることによって物体を生成します。そしてこれが私の神の像です」
奇妙な線と円を組み合わせた立体的な狂った印象を与えるつなぎ目のないつるつるとした像が忽然と床に屹立していた。
「この大きさ、形のものをどこかに隠し持つことは確かに不可能であるだろうしこんな形のものを接合もなしに作れるのは存在しない技術だろう…認めよう、神がいることを」
「認めていただいて幸いです。さて、神の言葉を伝えましょう」
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