第4話 顕現

 平穏な時間に訪れた何か不気味なものの話をしよう。おおよそ五月一日が訪れたころにそれは玄関に現れた。

「ええと、訪ねておいて言うのもどうかと思うのですが。どうして来たんでしたっけ?」

 身長は百九十をこえ二メートルを越えないくらい、顔に巨大な人の目を一つつけそれ以外に口も鼻もなく。全身真っ黒の影みたいな二足歩行の人型が扉の前に立ち私に

疑問を投げかけてきた。

 正気であればそんなものと会話を試みようとすらせず腰を抜かしたり、一目散に逃げ去ったりしたのだろうがその時の私は意識が朦朧とするほど酔っていたし人型が放つ柔和な雰囲気に飲み込まれていたのだと思う。

「変なことを言うやつだなぁ、俺んちの前に立ってんだから俺以外に用があるのかよ」

「それもそうですね鈴木 堂立さん」

「そうだよ、鈴木だよ。まぁ上がれや」

 私は鈴木という名字にコンプレックスをもっていて他人から呼ばれるのも好ましく思えないのだけどその時だけは受け入れられた気がした。そのまま勢いで招き入れたのも多分流されてのことだと思う。

「で、なんの用だって?」

「思い出しました!私は神の使い、そうですねハーミスとでも読んでください」

 慇懃に礼をしながら人型はハーミスと名乗った。相も変わらず不気味な姿だが話しているうちに意識が鮮明になり、恐怖を呼び起こしつつあった私には名前を知れただけで恐怖の緩和になった。

「ええと神の使いであるハーミスさんは、なにをしに私の家に?」

「意識の混濁から戻るのは少し問題ですね…どうやらあなたの精神に私が引っ張られていたようですし喜ばしいことではありますが」

 さっきから思っていたが話を聞いているのか聞いていないのか分からないな。

「そう思われても仕方ないですが本題には入りましょう、遠回りしすぎました。簡単に言いましょう、あなたには神の意志を伝える使者になっていただきたい」

「使者ではなかったのですか?」

「そうですが、正確には人間への使者ではなく地球に対する使者であり人間への説明は貴方に託すのが適切であると判断しました」

「こんなただの一般人になんてことを託そうとしてるんだ」

 なにかこう話が大きくなってきたぞ。職業、学者の四十路おじさんには恐ろしい状況に陥っているじゃないか。目の前の人型に見られて逃げられないし

地球とか人類とか意味不明だし。

「一から説明しましょう、神は元々この銀河を作りそれぞれの惑星に管理するための意思を付与しました。ですが長い時を経て星々はその主たる神を離れ独自の道を歩みその原初の美しさ失いました、その美しさを取り戻すべく神は惑星に修正を施したのです」

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