第3話 違和感

「始めまして、和也君。俺は日野 俊だ、秋馬新聞で記者をしている、話を聞かせてくれるかい?」

「…おじさんは僕の話を聞いてくれる人?」

「ああ、君のお父さんから頼まれてるんだ。君の話を聞いてあげて欲しいって」

 子供の相手は苦手だ。なにせ娘が小さい頃から俺に怯えて逃げるんだ。最愛の子供にそこまでされれば誰だって婉曲に得意ではないと言わず苦手というようになるもんだ。この坊主は話ができるだけいい方だとも思う。

「うーんとね、あの水晶とか蔦とかが生えた次の日に学校まで行ったらさ。色々生えてるし、みんな大変な顔して働いてるわけでさ。そしたら、色々なものがなんか気持ち悪く見えて…」

 要領を得ない話だが外に出て日常の変わった様を直接見たら気持ち悪くなったってことか。

「ごめん、少し辛いものを見せるかもしれないが…君が見て気持ち湧くなったものっていうのはこれか?」

 俺は現象が起きた次の日に撮ったここいら一帯の風景が映っている写真を一枚、和也に見せる。写真でもどういう風に彼の目に見えるかくらいは分かるはずだ。彼の見覚えのあるであろう風景のなかから指をさして確認してもらう。

「そうこれ、この水晶と蔦。なんかね色が違う感じがあってさ、俺と違うお前は嫌いだって言ってるような気がするんだ」

 確かに本来そこに存在していなかったものが存在するには違和感がある。だがそういったものが意思を持った者である場合は別として直接的に元々のものに理由もなく嫌悪感を自発的に抱かせるものだろうか?

「そうか、じゃあ逆に君はそれを嫌いだと思ったかい?」

「思うわけないよ、僕が何かされたわけじゃないし。そりゃ母ちゃんと父ちゃんは大騒ぎだけどさ」

「でも、見たら気持ち悪くなった?」

「うん、やっぱりさこっちが嫌いじゃなくても、あっちに嫌いだって言われたらさ怖いし落ち込むじゃん」

 子供は素直で時として残酷だ。彼は物言わぬ物体達が嫌いだといったと感じそれを素直に受け取って嫌われてるとしょげているのだ、人間相手ならなんとも可愛らしいし解決策もあるのだろうが何せ相手が相手であるし。また彼だけではない多くの子供たちが同様の症状を訴えて外に出られなくなっている。ここまでくるとあの物体事態に何かあるのではないかと疑わなければなるまい。

「ありがとう、苦労を掛けたね。またなにかあったら言ってくれ」

「僕もありがとう、ちょっとだけど話を聞いて貰ってよかった」

 荷物をまとめて福谷邸を後にする、今回のインタビューで疑っていたことが確証に変わった。会社に帰って情報を纏めよう、明日の朝刊ならば間に合うはずだ。

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