第2話 取材
「ええ、そうです。突然現れたんです、何の兆候もなくそこにあった感じでした」
俺は日野 俊。新聞社専属の記者をしている、地方の寂れた新聞社だが誇りを持って仕事ができている。
そんなスクープの一つもとることのない地方新聞社が一躍脚光を浴びたのは突然起こった奇妙な現象の第一報をどの新聞社、出版社に先んじて報じたからであった。普段は使わないメディア、インターネット配信、テレビ放送枠の占拠すらして第一報を流そうというその意気は最早数十年前に失われたはずの報道魂であったのかもしれない。まぁその理由が社長の見た夢であるというのはおかしい気がするが。
「あなたも感じたでしょう?あの言い様もない感覚を」
「私が取材した方達は皆、そのようなことをおっしゃいましたが私は感じることがなかったもので…分からないのです。具体的にはどういった感覚であったのでしょうか?」
そのような経緯もあり引退間近と噂されていた俺のようなものまで駆り出して、見境も無しに手当たり次第にインタビューを繰り返していた。そんな中俺は少数の人々が訴える一つの共通点にたどり着いた、奇妙な感覚を現象が起こったとされる時刻に感じたというのだ。
「うーん、なんというかなにかが頭の中で組みあがっていく感じがしましたね」
「組みあがっていく感じ?」
「プラモデルなんかをどことどこで接合するとかそういうことを考えてる時みたいな」
やはりそうだいままでに聞いたことと一致する。皆一様になにかが頭の中で組みあがる、膨れ上がる、生えると表現は違うがなにかが出来上がるイメージを頭の中に感じたという。そのイメージは今回発生した現象で出現した物、起こった自然災害、天変地異に関係するものばかりであった。大多数の人間が同じ夢を同時にみたという話が色々な場所に災害の予知だと伝わっているがあるがこれもその類なのか?
「貴重なお話ありがとうございました。それと最後に一つ、お子様に何か異変はありませんでしたか?」
これもまた共通の話の一つだ、現象のあと特に小学生の子供たちが外の景色に気持ち悪さや違和感を覚えて学校に行きたがらないというケースが増加している。
「異変?異変と言えばあの現象の翌日、息子が気持ち悪くなったとかで学校の途中で帰って来てそれ以降学校へ行けてないです…医者はストレスだと言っていましたが」
「本人にお話を聞くことは出来ますか?」
「ええ、大丈夫だと思いますが少し待っていてください。聞いてきますから」
彼、福谷 哲三の息子、福谷 和也は市内の小学校に通う小学5年生であり、あの日までは活発でスポーツクラブに所属するスポーツ少年だったが今は見る影もなく顔を青白くし、なんとか体を立たせているといった風情の状態であった。
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