回帰と発展
河過沙和
第1話 会議
その日は突如訪れた。夕立が突然ふるように、突風が人を吹き飛ばすようにあるいは狐の嫁入りか。それは人類にとって予測し得なかったことだったありとあらゆる現象、事象におくびも前兆を見せず、まるでさも起こることが当たり前で、地球の表面に住む雑多な生命に気を遣うことなどないといった風であった。
「…目下、原因を調査中でありますが前例がないこともあり調査は難航しています。また一部の研究者たちからは神の所業であると言う者も出始め研究チーム自体の士気が下がっています」
地下に作られたシェルターの中で緊急会議は行われていた。会議にはおおよそ日本の指導者と言われる人物の大半が集められうる限り集まっていた。総理大臣、環境大臣、国土交通大臣といった直接的に事態に関わりある大臣はもちろんその他の官庁の上級官僚たちも集まっていた。そんな中事態解明の研究者チームの代表を務める大学教授、由良 太郎は資料に目を落とし聞いているかも分からない会議の出席者たちに対して必死の説明を最早一時間は続けていた。
「…それで事態解明の目途はたったのかね?」
全ての出席者たちが長い会議に疲れ、口をつぐむ中しぶしぶといった感じで環境大臣は口を開きあからさまに苛立った口調で研究の結論を問いかけた。
「率直に結論を申し上げますと目途を立たせること自体不可能であると言わざるをえません。周囲の環境を徹底的に調べました、水、空気、土といったところから放射線、出現した物体の組成、質量など考えられる物すべてを。ですがなんらかの人為的自然的な作用の痕跡は検出できませんでした」
「つまり?」
「文字通り、零時を回った時点でなんの科学的作用を持たずに山が割れ、海の状態が原初まで巻き戻り、あるはずもない物体が出現したとしか言いようがないのです」
誰もが驚きを隠せなかった、意識を淵に落としかけていた出席者たちですらそのありえない状況を聞き動揺を隠せなかった。なんらかの成果がでて各々の持ち場に持ち帰り適切な処理を命じるだけだと思っていた、それがすべて引っ繰り返った上に国の最高クラスの研究者たちが匙を投げたことなど信じられなかった。
「嘘だろう?」
「残念なことにすべて本当の事です。何度も何度もそれこそデータの隅から隅を何度も確認しても覆ることはありませんでした。完全に我々の敗北です…」
会議に沈黙の帳が降り、進行役の秘書官が時計を見て会議の終了を告げるまで誰もが何の行動もとれずにただただ打ちひしがれていた。
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