White Town

石上あさ

第1話

空を覆う鉛が

鈍いグレーの灰を落とす


人々は縮こまり

すきま風に病んでゆく

すべてのドアは閉ざされ

凍りついたように静まり返る


僕は

童話の中のジャケツのことを

考えている


繋いだこの手に 通った温度を

僕たちは分かち合おう

手放さなくちゃいけないものも

人生にはあるけど

僕は君を愛してる



空はじょじょに溶けだし

白い光の粒が踊る


氷像は動きだし

雪だるまが微笑んだ

ドアから人が出てきて

明るい笑い声 弾けて光る


赤い

ジャケツが町の呪いを

解いたかのよう


通わぬ心を 隔てる距離さえ

噛みしめて共に行こう

諦めなくちゃならないことも

世の中にはあるけど

僕は人を信じてる



雪の声を瞳で聴いた

詩人の言葉は魔法となって

やがて詩人も言葉になった

言葉の中で永遠(とわ)に生きた



かじかむ心を 溶かしたぬくもり

それをこそ唄とよぼう

押し殺してたいろんなものは

薪にくべて火を灯し

寒い夜を照らそう


繋いだこの手に 通った心を

いつまでも覚えてよう

諦めなくちゃならないことも

人生にはあるけど

僕は君を愛してる

僕は君と愛してる

人の夢を愛してる


 


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