神無月*妖怪大運動会(ギャグ回)

*ギャグ回です。なんやねんこれって言うといてください。


さて、はじまりました。毎年恒例の妖怪大運動会

司会の河童です。よろしくお願いします

解説には西園寺桔梗さん、救護班には藤臣先生をお呼びしておりますので

みなさん気張って転んでいきましょう!


運動会と言えばこれですね。『障害物競走』


エントリーナンバー1番。小なまはげの優太くん

「あ、ども。優太です。脅かしにいって驚いて帰るようななまはげですが頑張ります。」


エントリーナンバー2番。ろくろっ首の大年寄

「あんだって⁉」

あ、失礼いたしました

ろくろっくびの大姉様


エントリーナンバー3番。ぬりかべの可部さん

「ぬーりーかーべぇー」


エントリーナンバー4番。透明人間のスケルンちゃん

「・・・・。」

あれ?いますか?おーい。


「以上の4人で第1レースをスタートしていきたいと思います

では、位置について、よーいっ


どんっ‼」


4人は一斉に走り出した

白い直線のレーンを一心不乱に走り抜け、はじめの障害物にトライする


「一斉にスタートいたしました。障害物競走。まず最初はーっ


ぷかぷか火の玉キャッチだぁ‼」


*自由にぷかぷかと浮く火の玉を先にキャッチできた人から次の障害へ向かう


ふわりふわりと浮き上がる火の玉に手を伸ばすものの、小馬鹿にしたように宙を舞う火の玉をなかなか捕らえられずに、悔し気な表情を浮かべる


その時、地面が真っ二つに割れたのではないかと思うほどの地鳴りがどがぁぁぁんと響き、巨大地震でも到来したかのように大きく揺れた


「お、おおっと、ぬりかべ選手。転倒っ‼

え?足が短すぎて起き上がれない?

担架持ってきて‼

重たすぎて誰も乗せられない?起こせもしない?えぇぇ、どうするの可部さん。」


ぬりかべ選手ここで脱落


「お!そうこうするうちに小なまはげの優太くんが火の玉を捕まえましたよ。」


小なまはげは一気に差を広げようと次の障害物へと疾走した


「さて、お次は?借り物競争だっ‼」


小なまはげは机に折りたたまれて置かれた紙を一枚選んで、それを開くと

神妙な面持ちでじっと見つめた


「なにを、引いたんでしょうねぇ。」


会場中がしいんとして彼の言葉を待った


「僕、字読めないんだった。」


小なまはげは肩を落とす。

それを見た桔梗が

「私が読んであげる。紙持っておいで。」


小なまはげは嬉しそうに桔梗のもとへやってきて紙をひろげて見せた

「『好きな人』だね。」


会場中からひゅーひゅーとはやし立てる声が聞こえる


そうこうするうちにろくろっ首と透明人間もほぼ同時に火の玉キャッチを終えたのだろう

ろくろっ首も机に置かれた紙を開き、その横では透明人間が紙を持ち上げてそれを開く。

はたから見れば、紙がひとりでに浮いて広げられるようにしか見えない


ろくろっ首が声をあげる

「あたいも『好きな人』だよっ。どうなってんだいここの運営はさ。つるしあげようってんじゃないだろうね。」


「さ、さぁぁ、どうでしょうか。わ、わたしは姉さんの好きな人が気になってたり、なってなかったり、ですけど、ええ。」


司会の河童はなぜか照れ気味に下を向いてもじもじしている


先陣を切って『好きな人』を借りてきたのは小なまはげだった

「じゃあ僕、桔梗ちゃんにするー。いつも優しいから大好きー。」

「えっ私でいいの?わぁぁありがとう。私も優太くん大好きだよー。」

ふたりは手をとってゴールへ向かう


ろくろっ首の姉さんは慌てて近くにいた藤臣の腕をとった

「あ、あたしは先生にするよっ。この前、ながーいのどに効くいい薬を調合してもらったしね。」

「え・・・いや、わ、わたしは・・・」


無理やり腕をひかれる藤臣


「ちょっとまったぁーーーーーー‼」


「で、出ました。ちょっとまった宣言‼手を挙げたのはー?」


小さな消炎とともに現れたのは、藤臣の恋人、葵である


「藤臣はわらわの好きな人だっ‼」


「いいじゃないか。今ちょっとだけ借りるだけだよ。」


「いやだっ!貸さないっ!」


ろくろっ首と葵が押し問答をしているうちに、小なまはげと桔梗のコンビがゴールテープへ向かう


「あ、ちょっとっ‼」


それを見たろくろっ首は首をにゅーっと伸ばしてゴールテープへ近づける


ろくろっ首の首に気がついた小なまはげは走った

まるでなまはげに襲われる子供のように、それはそれは懸命に


ぱぁんっ、という音と共にレース終了が示された


「僕だっ」

「あたいだよっ」


選手たちが息をのんで見守る電光掲示板に表示されたのは


『1位 透明人間のスケルン』


うそだっ。誰もゴールを見ていないぞ。

ビデオ確認はどうだ。なんだってビデオにも映ってない?

なにをやってるんだ、ビデオ班は


だから、見えない系の妖が競技に出る際は呪符を持たせろと去年決めただろう

なに?忘れてた?

やれやれ、物の怪にでも化かされたか?


あぁ、今年の本部は妖狐さんだったの・・・・。ふうん。誰も逆らえなくて・・

そうねぇ。姉様方、一軍ギャル並みに怖いからねぇ。


「じゃあ、2番は僕だ!」

「あたいだよっ」


『2位 小なまはげの優太』


「やぁったぁー‼やったねぇ、桔梗ちゃん。」


「うそだよっ。あたいの【クビ】のほうが早かったじゃないか!」


にゅぅーっと伸びた首がとぐろを巻いて上空からクレームが飛ぶ


「競技に有利に働く、個人の能力の使用は反則です。」

「んなっ、、、、。はぁ・・・やれやれ、仕方ないねぇ。」


ろくろっ首はしょんぼりと元の位置に首を戻した


なぜか司会の河童も意気消沈して頭上の皿をゆらゆら揺らしている


「ねえさんの好きな人、僕じゃなかった・・・・。先生!僕に美容整形を!」

「すみません。専門外です。」


それを聞いたろくろっ首は誰にも聞こえないほどの小声で

「あんな大衆の前で、お前を選べるわけないじゃないか・・・・。」

と頬を赤らめているのであった


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